人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

研究者

専門家とメディアの信頼に基づいて、一緒につくっていきたい

新卒で入社した新聞社の社是は、「中立公平」だった。記者は、ファクトを探してきて、自分をできるだけ省いてそのファクトだけを書くのが仕事だ。そう思っていた。 「Aさんはインドネシアを侵略すべし、と言った。一方Bさんはマレーシアを侵略すべし、と言っ…

鍵盤を叩く自分の指が伸び縮みするような錯覚が起きる「えくす手」

東大・廣瀬研M2のなみちゃんの作品「えくす手」は、表示する映像で見た目を変えることで、鍵盤を弾いている手があたかも伸びたり縮んだりするかのような体験ができる。 半年前に東大の制作展で体験したときは、映像の視覚効果だけだったが、あたかも本当に自…

研究者が“倫理”を議論したくなる場だった

「倫理セッションよりも倫理的になってきましたね・・・」 と司会者が言った。先日の人工知能学会全国大会の3日目の、人工生命化する社会のオーガナイズドセッション(OS)でのことだ。 このOSはオーガナイザーの一人の池上先生が仰る、複雑化する社会を人…

人工知能(AI)とバーチャルリアリティ(VR)の関係

AIが流行っている。VRも流行っている。少なくとも、情報系の業界内では。でもこの両者、関係ないそれぞれ独立のテクノロジーと独立の文脈での流行りのように見えるけれど、実は大きく関連しているみたいだ。 AIはコンピュータが人の知能のような振る舞いをす…

世界の見方が変わるVR

VRが流行っている、と言われている。VRの体験と言うと、ヘッドマウントディスプレイ(HMD、最近ではVRヘッドセットとか単にVRとか呼ばれているみたいだけれど)を被って体験する、現実にあるものを映像で再現するという体験を指すことが多い。 VRでおもしろ…

自閉症スペクトラムの視覚世界を体験するVR

自閉症スペクトラム(ASD、広汎性発達障害)は発達障害の一種で、対人交流とコミュニケーションが苦手で、自分の関心やペースを優先させがちなのが特徴だ。自閉症やアスペルガー症候群などもここに含む。 ASDは社会性の障害と言われるが、最近の研究では、知…

五月祭はロボットを楽しんだ

東大の五月祭が昨日と今日開催中だ。近所の本郷キャンパスで開催されているが、混雑とリア充が苦手なので、あえて近づかない。母校の北大では6月に楡陵祭という学祭があったが、勝手に参加放棄をして旅行とかに行っていたっけ。でも、昨日は五月祭に行って…

東大「情動」のシンポジウムで、VRから情動の、廣瀬先生の話を聞く

調べ物をしていて東大の産学連携のサイトを見ていたら「情動」の二文字が。「第26回科学技術交流フォーラム 情動ー人の感性を科学するー」と言うイベントでした。ここのイベントとしては珍しく満員御礼で座席数の多い会場に移すほどの大人気ということでした…

「よわい」人間と「つよい」人間

自分が目立ちたいと思っていなくて、恥ずかしがり屋で、誠実に言葉を選ぶ「よわい」人間と、自己アピールが得意で、それゆえセンセーショナルな言動で人を惹きつける「つよい」人間に、おおまかにわけられるとしたら、私は「よわい」人間に共感し続けている…

政府や企業、研究機関などの会議やシンポジウムには若者や女性がほとんどいない

科学技術や医療の取材をするようになって早10年目になった。企業や政治家、マーケットの取材をしていた時期もありつつ、中央省庁、大学・研究機関、医療機関などにはずっと取材に行っている。それらの会議やシンポジウムの取材に行って、気付くことがある。…

なぜ女性の研究者は少ないのか?

工学系や情報系の研究者をずっと取材していると、取材対象者はほとんどは男性だ。学会や研究会のイベントへ行くと、だいたい9割が男性。今日行ってきたコンピュータ囲碁大会は、事務局のお姉さんを除くと100%男性だった。 女性の数は全体の半分いるはずだ…

IT人材不足と言うけれど、変な人たちを受け入れる環境が企業を強くするのでは

ITはあらゆる分野に入り込み、ITを制したものが経済を制するのが現状だ。ところが、国内では、そのIT人材は不足しているという。経産省系独法の情報処理振興機構(IPA)が毎年出しているIT人材白書によると、ずっと不足している。ちなみに昨年度版では、「大…

変態で変人の研究者たちが愛おしすぎるマンガ「決してマネしないでください。」がめちゃくちゃおもしろかった

Unityの簗瀬さんが「決してマネしないでください。」(蛇蔵、講談社)をFBで薦めていてKindleでポチったら1ページ目からツボにはまり、全3巻一気読みして、明日朝早いのに、感想文を書かずにはいられない深夜3時。とにかく読んでいると、研究者が大好きだ…

「自分の頭で考える」は、自分ひとりじゃなくて、ほかの人と一緒に

「自分の頭で考えなさい」 とメンターのような元上司に、しょっちゅう言われる。質問をすると、まあだいたいそうやって叱られる、いまだに。 「考えてもらいたい。考えるきっかけになればと研究をしている」 と尊敬する研究者である友人は言う。 友人が言う…

テレプレゼンス人間に、コミュニケーションを代行する

遠隔地にいる人とのリアルタイムのコミュニケーションには、Skypeなどテレビ会議(顔が見える、主に音声でやりとり)や電話(音声でやりとり)、チャット(テキストでやりとり)を使う。チャットと比べるとSkypeでは、表情と音声でコミュニケーションがとれ…

安心して「炎上」できる場が、テクノロジーを進化させる

「議論を呼びそうな研究を安心して見せて、いろんな人のフィードバックをもらって、社会に受け入れられるのかどうなのか、どういう形なら受け入れられるのか、次にどういうふうに研究を進めていけるのか、議論して考えられる場があるといいよね」 と、インタ…

「炎上」して好循環が生まれた、人工知能学会誌表紙問題

前回の続きで、「炎上」によってテクノロジー、研究が良い方向へ向かうサイクルの話。意図せずして議論を呼び「炎上」し、研究者自身が変容し、新しい物事が始まり、結果的に研究者にとっても社会にとってもよい循環に入ったという事例に、人工知能学会誌の…

人工知能研究で文科省、経産省、総務省の連携は同床異夢か

文科省、経産省、総務省の三省が連携して人工知能研究を進めるという。もともと政府の日本再興戦略などで人工知能研究の推進をうたっているので、当然といえば当然だ。だが、それぞれが見ている夢は異なるのではないだろうか。 先日、経産省系ファンディング…

機械を支配し、機械に支配される、人と機械のあり方

人工知能(Artificial Intelligence:AI)やロボットが人の雇用を奪い、やがて人の知性を超えるシンギュラリティが訪れるーー。パソコンやスマートフォンに四六時中向かっていることで、心身ともに健康を蝕まれていくーー。 有史以降、言語、印刷技術、写真…

バーチャルリアリティ(VR)ってなんだ?

バーチャルリアリティ(VR)の市場が立ち上がりつつあり、今年はVR元年とも言われる。Oculus、サムスンのGear VR、プレイステーションVRといったコンシューマー向けのヘッドマウントディスプレイ(HMD)が登場し、ベンチャー企業を中心としてアプリ開発やコ…

人工知能とエマちゃんのこと

友達のエマちゃんのことを(勝手に)書く。エマちゃんはいわゆる文系の博士で研究者だが、人工知能に詳しい。というかよく人工知能研究者と一緒に仕事をしている。不思議なポジションにいる。 エマちゃんは文系も理系も領域を超えていろんな研究者を巻き込ん…

何でもかんでも“人工知能”って呼ばない。

触覚研究者の渡邊淳司さんが2014年に出した本が毎日出版文化賞を受賞して、その祝賀会が先日あった。そのときに淳司さんにもらったのがこのステッカー。 「何でもかんでも人工知能って言わない」 人工知能ブームだ。 人工知能研究の歴史は長い。人工知能実現…

シャノン界面とウィーナー界面で、人と機械の関係を考える

人間拡張工学を提案していると東大教授の稲見先生は、人と機械の関係を、情報世界と物理世界を分ける「シャノン界面」と制御できるものとできないもので分ける「ウィーナー界面」で、四象限に分類して考えられるのではないかと言う。 人と機械の関係を考える…