人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

Apple ResearchKitと医療現場のIT利用

Appleが昨年3月に公開したResearchKitは、臨床研究に必要な個人のデータを、iPhoneを使って簡単に収集できる医学研究向けアプリ開発のフレームワークだ。

 このたび、順天堂大学パーキンソン病、喘息、ロコモティブ症候群の臨床研究向けのiPhoneアプリを開発して公開した。目的は、臨床研究向けの情報収集だ。利用者は、アプリからアンケートに回答する。

 ResearchKitを使うと、これまでは医師がひとりひとりに依頼と説明をしてアンケート用紙に記入してもらうなど、手間だった作業が、iPhoneアプリを使った説明や承諾、アンケートなどで簡単になる。医師の負担が減るほか、臨床試験に参加したい人が気軽に参加できるメリットがある。

 そもそも臨床研究とは、主に医師が主導して行われる、病気のメカニズムの解明や病気の予防、診断や治療を開発するために行う研究のこと。一般的な保険診療とするために国に承認申請をするには、厳しい条件で行う臨床試験(治験)が必要だが、臨床研究はスムーズな治験を行うためにも必要な研究となる。

 ResearchKitを使ったiPhoneアプリを国内で初めて昨年10月に公開したのは、慶應義塾大学だ。

 先月の医療ビッグデータ研究会では、このアプリ開発をした慶大病院医師の木村先生が講演した。木村先生は循環器内科の医師で、不整脈の治療などの臨床に従事しているが、かつては医師免許取得後にSEの仕事をしていたという異例の経歴だ。自分でプログラムも書くという。

 その木村先生は言う。「不整脈の手術では心臓に通すカテーテルの位置、電気の状態などをモニターしている。1件の手術で数千、1万ものデータのファイルができるこの時点でお手上げ。データのハンドリングができればもっといろんなことができるが、それができなくて日常の診療の中で埋もれているデータがたくさんある」

 医療現場でのデータの扱い方、IT活用の困難さの現状を感じた。