科技メモ

テクノロジーと人間について、取材の備忘録とか思ったこととか

シャノン界面とウィーナー界面で、人と機械の関係を考える

 人間拡張工学を提案していると東大教授の稲見先生は、人と機械の関係を、情報世界と物理世界を分ける「シャノン界面」と制御できるものとできないもので分ける「ウィーナー界面」で、四象限に分類して考えられるのではないかと言う。

 人と機械の関係を考えるときに、情報の世界を構成する「ビット」を現実の物理世界を構成する「アトム」とに分けて考えることが多い。情報理論の基礎を築いたクロード・シャノンに因んで、両者の境界を「シャノン界面」と稲見先生は呼ぶ。

 一方、シャノンが情報理論を発表した1948年に機械や生物に共通する通信や制御についての理論を「サイバネティックス」として発表したのがノーバート・ウィーナーだ。ウィーナーは世界を、「直接制御できるもの」「制御できないもの」の2つに分けて考えた。稲見先生はこの境界を「ウィーナー界面」と呼ぶ。

 シャノン界面とウィーナー界面の2軸で分類すると、図のような四象限に分けられる。

 第一象限は、物理世界で直接制御出来ないものだ。たとえば人の内臓感覚や自然の気候がそこに含まれる。第二象限は情報世界で直接制御出来ないもの。SNSなどウェブでの情報の流れはここに入る。第三象限は物理世界で制御できるものだ。第四象限は情報世界で制御できるもの。スマホやコンピュータなどデバイスはここに入るだろう。

 稲見先生が提案する、人間拡張工学は、第三象限を対象としている。そこで人間と機械とがどうインテグレートしていき、身体を拡張し、脱身体をし、将来的には分身や合体を考えていくという。

 テクノロジーはこれまでも身体を拡張してきた。人間拡張工学によるポスト身体社会では、人の身体観が変わると稲見先生は言う。

 人間拡張工学については、稲見先生の近著、「スーパーヒューマン誕生!—人間はSFを超える」(NHK出版新書)に詳しい。この本では、誰にでもわかりやすく読みやすいように、SFからの引用を散りばめた上で、機械工学や情報技術の研究のこれまでの経緯や現状が完結にまとまっている。

 SFやテクノロジー好きにはもちろんだが、テクノロジーと切っても切り離せない現代社会を生きる上で、楽しみながらテクノロジーの進歩の知識を得られる、一家に一冊あると便利な本です。