NTTとパナソニックの透けるディスプレイ付きAR端末
スマートフォンよりやや大きいサイズの透けるディスプレイ付きの専用端末を、NTTとパナソニックが開発した。端末のカメラで風景を撮影すると、そこに写っている建築物などを画像認識して、透けるディスプレイ上に建物の名前と言った情報を表示する。ディスプレイの向こう側の実際の風景の上に重ねて表示される。
目の前の現実世界に情報を重ねあわせて表示するのは、オーグメンテッド・リアリティ(拡張現実感、AR)と呼ばれ、これまではスマホやタブレットを使い、カメラで撮影した映像をディスプレイに表示し、そこに重ねあわせることが多かった。
一方、この端末は透けるディスプレイを使っているので、現実世界にそのまま重ねあわせることができるというわけだ。これも昨日のNTT R&Dフォーラムで体験したもの。
端末はカメラと通信システムのみでできており、撮影した画像はクラウド上で処理され、建物名などのテキスト情報が端末に送られてディスプレイに表示される仕組み。端末本体で情報を処理したり記録したりする必要はなく、撮影と通信機能だけですむので安価にできるという。デモでは、観光案内を想定して、建物の名称が表示されるアプリケーションだったが、導入するアプリ次第で、ほかの用途も可能だ。
ただ、思った。AR専用端末は必要なのだろうか?スマホのような汎用端末に組み込めないのだろうか?観光専用だとニーズがあるのだろうか?
もっとも、プレスリリースにもある通り2020年に向けて訪日外国人向けサービスがターゲットということなので、汎用性を求めていないのかもしれないが。
ARやウェアラブルは、今はアプリケーションとして見られているが、今後はプラットフォームになる、と言うのが神戸大教授で「ウェアラブルの伝道師」塚本昌彦先生だ。塚本先生は15年前からメガネ型ディスプレイを装着して生活していることでも有名だ。
メガネ型ディスプレイは、汎用的なAR端末と言える。通常のメガネとして使えるほか、透けるディスプレイとして情報提示に使うこともできる。
これまで情報技術の進歩は、コンピュータの普及にともない、私たちがコンピュータの中に入り込むことで、便利さの恩恵を受けてきた。それがスマホの普及に伴い、情報技術を持ち歩けるようになった。さらに表示デバイスがウェアラブルになることで、コンピュータの中に没入していた私たちは、現実世界にいるままに情報技術の便利さを享受できるようになる。
というのが一般的な見方だ。このストーリーに当てはめると、パナソニックとNTTのAR専用端末は、スマホとウェアラブルの中間に相当するということになる。一時的にはニーズがあるのだろうか、どうなのだろうか。個人的にスマホで十分だ。中途半端に感じる。