科技メモ

テクノロジーと人間について、取材の備忘録とか思ったこととか

IT人材不足と言うけれど、変な人たちを受け入れる環境が企業を強くするのでは

 ITはあらゆる分野に入り込み、ITを制したものが経済を制するのが現状だ。ところが、国内では、そのIT人材は不足しているという。経産省系独法の情報処理振興機構(IPA)が毎年出しているIT人材白書によると、ずっと不足している。ちなみに昨年度版では、「大幅に不足している」「やや不足している」と回答した企業は87.4%だった。自分知る限りずっと不足しているんですが。解決する気あるのかしら?

 国も何もしていないわけではない。そのひとつがIT人材発掘・育成事業の「未踏」だ。IPAが2000年から行っており、これまでに約1600人のIT人材を輩出してきた。

 「未踏」はスーパークリエイター認定をするなど、トップレベルのIT人材を育成することで知られる。学生は東大などが多く、未踏出身のエンジニアはアカデミアでもビジネスでも活躍しており名の知られた人も多い。成功した起業家としては、tacramの田川さん、チームラボとpixivを創業し現在は3社目のユカイ工学の青木さんとか、トヨタなどと組んで人工知能で有名なプリファードインフラストラクチャーの岡野原さんとか。

 未踏のことを知ったのは、IT分野の研究開発の取材をする中で、おもしろいなあと思うエンジニアや研究者から、よく「未踏」「スパクリ」という単語を聞いたからだ。調べてみると、著名なエンジニアなり研究者なり知った名前が多かった。

 だが、これまで未踏関係者の悩みのタネは、「せっかく育てた人材がGoogleなど外資へ行ってしまう」ことだった。そこで昨年からは一社「未踏」を設立して未踏人材の起業支援も強化しているという。

 だがそもそも、右にならえで多様性を許容しない、日本の社会や職場環境がITエンジニア、特に優秀でクリエイティブなエンジニアには合っていないのではないか。

 プログラムの話を何時間もし続ける、飲み屋さんでいきなりデモを始めるーー。

 私が見てきたスタートアップや大学にいる優秀なエンジニアは、変な人ばかりだ。一方で、優秀なエンジニアには「大企業に行きたくない」と言う人も少なくない。研究者として大学に残ったり起業したりしている(それもいいと思うけど)。田川さんは東大の学生時代に大手メーカーのインターンに行き製品を作る工程が、プランナー、エンジニア、デザイナーとそれぞれ細分化して分離しており、これではまずいと思ったと言う。

 企業がITを活用して勝ちに行くには、エンジニアを尊重してうまく引き延ばすような環境が必要なのではないか。

 なお、IT人材不足というのは90年代以降ずっと言われているが、その内容は変わってきていると思う。特にこの10年。以前はシステム開発など大規模な開発を行うSEやプログラマーの不足を主に指していたように思うが、最近ではそれももちろんなのだけれど、それ以上に新しいプロダクトやサービスをつくるクリエイティブなIT人材のことを指しているように見える。その点、未踏人材のような人材がより重要視されていると思う。

 IT企業の位置づけのここ10年の変化はわかりやすくておもしろい。米コンサルが毎年出している、Global Innovation 1000 Studyの2015年の10 most innovative companiesは1位からAppleGoogle、テスラ、サムソン、amazon、3M、GE、マイクロソフトIBMトヨタだ。

 ちなみに10年前のトップ10は1位からサノフィ、マイクロソフトファイザー、フォード、ダイムラートヨタGMシーメンス、松下(パナソニック)、IBM。ランキング方法が変わっているからなんとも言えないところもあるが、リーマン・ショック後の2010年に、トップ10はすべて前年の圏外からで顔ぶれがガラッと変わった。おおざっぱには、それまでのハードウェアからソフトウェアへ、製造業・製薬からITへとゲームチェンジした印象だ。