世界の見方が変わるVR
VRが流行っている、と言われている。VRの体験と言うと、ヘッドマウントディスプレイ(HMD、最近ではVRヘッドセットとか単にVRとか呼ばれているみたいだけれど)を被って体験する、現実にあるものを映像で再現するという体験を指すことが多い。
VRでおもしろいなあと思うのは、世界の見方が変わるVRだ。
HMDを使う多くのVRは、ディスプレイに表示する映像によって「だます」ことであたかも現実であるかのように思い込ませている。ただ、その体験がリアルに感じるからすごいとか、現実みたいだからすごい、というものはまあそうだよね、というかこの分野を10年近く取材していると、いい加減飽きた。
一方、VR体験によって、世界を認識している自分の知覚と脳での情報処理がいかに曖昧であるかを実感することがある。
たとえば、4年位前に体験した、藤井先生たちのHMDを被って見ている映像に、実際に目の前の映像と、あらかじめ撮っておいた映像との境界がわからないように切り替えて流すと、現実と映像がつくる仮想世界との境界がわからなくなるというものだ。藤井先生はこれを「代替現実(SR)」と呼ぶ。
はおもしろかった。MIRAGEはアートパフォーマンス作品で、HMDを被って椅子に座った体験者の周りをダンサーが踊っているのだが、実際に踊っているダンサーと虚構の映像が入り混じり、現実と虚構を行ったり来たりする。このとき、視覚情報だけではなく、耳で聞こえる聴覚情報や、ダンサーに触れるといった触覚情報をもとに、どれが現実でどれが虚構かを考えるのだけれど、見事にだまされる。
人の知覚ってなんて曖昧なんだろう!って。
それが空間知覚でも簡単にだまされる、というのを感じたのが、鳴海さんたちの
だ。 にも書いたが、本当にだまされる。何の違和感もない。そのことについて、いかに人間の感覚ってあいまいで、自分が見ている世界なんて、自分がこうだと信じているに過ぎないのだなあと思った。今のところ、VRは、そういうふうに世界の見方を変えさせてくれるものが、個人的におもしろい。