科技メモ

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紅白歌合戦2016ーPerfumeのダイナミックVRは次のVRの流れを作るか?

紅白歌合戦の楽しみは、演出のテクノロジー。テクノロジーの流行が反映されています。毎年楽しみなのがRhizomaticksが演出を手がけるPerfume。今回は「ダイナミックVR」と言うキーワードが。

床面と背面の2方面がディスプレイになっていて、そこでパフォーマンスをするという演出。背面のディスプレイは3分割されて、途中で移動します。床面と背面の映像がシームレスにつながって表現されているので、テレビ越しには、ディスプレイによってつくられた映像世界にPerfumeの3人が入り込んでいるように見えます。

このダイナミックVRの紹介動画は以下で公開されています。

これってCAVE!

と思ったら稲見先生がつぶやかれていた。

CAVEは1992年に米イリノイ大学の研究者らが開発したVRシステムで、没入型ディスプレイ(IPT)と呼ばれる。

VRはディスプレイの技術だと言われるが、VR普及元年と言われた2016年はPSVRやOculusのようなヘッドマウントディスプレイ(HMD)の発売が相次いだ。一方で、周囲の環境を再現することで没入感を増すIPTもVRのディスプレイのひとつだ。

HMDをかぶって装着するのは、身体的な苦痛を伴う。一方で、CAVE型のディスプレイでは、自分がいる空間を囲う壁に映像映し出されるため、HMDをかぶる必要がなくより自然に近い状態で体験ができる。もっとも、3D映像を体験するには、やはり3Dメガネを掛ける必要があり、それは難点だと思う。

1990年代には日本国内にもCAVE型のディスプレイが作られた。それが東大にかつてあったCABINと、岐阜県に今もあるCOSMOSだ。

どちらもCAVEを参考にして作られたことから、CAVEに敬意を払って”C”から始まる名前をつけたという。しかも、アルファベットの数がスクリーンの数に対応している。つまり、イリノイ大学のCAVEは前、左、右、床の4面がスクリーンだが、CABINは前左、右、床、天井の5面がスクリーン、COSMOSはそれらに加えて後の6面がスクリーンだ。

CABINは数年前に体験させていただいた。3Dをメガネをかけるとはいえ、高い没入感があった。なくなってしまったのが残念。

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東大のCABINは2012年末を最後に撤去されてしまったが、COSMOSはまだ現役と聞いた。

ところで、筑波大に一昨年つくられたエンパワーメントスタジオもIPTだ。体育館ほどの広さがあり、天井以外の5面に映像が投影されている。ただし、広さのために解像度が低いためか、没入感はCABINほどではなかった。

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研究としての VR研究が盛り上がったのが1990年代。当初HMDから、IPTの開発へという研究の流れができた。

一方で、VR普及元年と言われた2016年は、一般向けのHMDが数多く登場した。今後、VR普及の流れはIPTに行くのだろうか。HMDは個人のみのVR体験だが、IPTは同じ空間にいる他の人達とVR体験を共有できる。

ところで、HMDが流行る数年前からパブリックスペースで増えたプロジェクションマッピングも(紅白でも椎名林檎TOKIO東京都庁での演出などに使われていた)、IPTのようなものでは。

いずれにしてもIPTの実現には空間とコストがかかるので、それを超えるだけのインセンティブが必要。HMDは今のところゲームくらいで、まだキラーアプリがないのが現状だろう。多くの人が同時に体験できるIPTは2020年五輪がキラーコンテンツになるのか、ならないのか。

個人的にはHMDが嫌いで、普及するなら2段くらい飛ばして侵襲型BMIでいいんじゃないのか、と思っていますが、、侵襲型BMIの実用化は自分が生きている間に実現しそうもなさそうなので、その前にIPTがもう少し普及してもいいのかなあと思います。