科技メモ

テクノロジーと人間について、取材の備忘録とか思ったこととか

ヒューマノイドロボットは電気羊の夢を見るか

 経産省系のファンディング事業を行っている新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)の担当者は言う。

ヒューマノイドロボットは災害時に活躍します。災害現場や建物の中は、人に適した作りになっているから、ヒューマノイドロボットならば、人に代わって中に入っていて災害対応ができます」

 多くの人はこれを聞いて「なるほど」と思うのだろうか。鉄腕アトムドラえもんヒューマノイドではないが)みたいなロボットが活躍するのかしら?それともガンダムエヴァンゲリオンみたいに、人が操縦するタイプ?いやいや、攻殻機動隊みたくサイボークかしら?思い浮かべるのはSFだ。

 そうじゃなくて、現実世界の話をしているのだ。

 昨年末東京ビッグサイトで開催された国際ロボット展では、NEDOが2年間支援してきた、災害対応時に活躍するヒューマノイドロボットのデモンストレーションが行われた。トンネル事故を想定したセットで、2体のヒューマノイドロボットが協働して災害対応活動をする。がれきの上を歩いたり、通路を邪魔する障害物をどけたり、ドアを開けたり、バルブを回して消火作業をしたりといった30分間のデモが行われた。

 このデモを見て、災害対応にはやっぱりヒューマノイドロボットよね!って一体どれだけの人が納得するんだろうか?

 個人的には、ロボット研究もヒューマノイドロボット研究も好きだし応援している。だが、特にヒューマノイドロボットは「これに使えます!」「便利になります!」「儲かります!」って類のものではない。少なくとも今の段階で展望できる範囲では。

 むしろ夢やロマンだ。まだ達成し得ないからこそ永遠に挑戦し続ける到達点。技術のシンボル。象徴。目標。そこで開発した技術が他で役立ったり、技術そのものの底上げをしたり、また人材育成になったりというのが大きい。だが成果はヒューマノイドロボットそのものではないのではないか。

 科学技術はロマンがある。夢がある。夢やロマンを語ることは重要だ。夢やロマンには、人・金・モノが集まってくる。それによって今の夢は将来リアルになる。特に、技術が社会を変えていくという技術決定論的な状況では、その傾向は顕著だ。こういう社会になるという未来予測があって、技術がそれを牽引していく。

 でも、リアルの文脈で夢やロマンを語ることが、そぐわない時代、内容、状況もまたあるのではないか。

 ひとつは、社会は変わっていく、という否定し得ない事実だ。

 右肩上がりの時代はよかった(のだと思う。生まれていないから体験していないが)。技術が進歩すれば、それが経済成長に結びつき、社会は良くなるという考え方ができた。

 でも今は、科学技術は確かに進歩しているはずなのに、失われた20年を経て未だに経済は停滞したまま、少子高齢化社会が進み、社会は縮小していく。いま目の前にある技術がこれからの将来の社会を変えてよくしていく、という単純には考えられない。

 もちろん、技術は社会に影響を与える。でも、現在と将来では、技術だけでなく人間の価値観も含めて社会そのものが異なる。今現在語る技術の夢やロマンは、将来の社会の価値観と合っているかどうか、わからない。技術と社会は相互作用をしながら、時系列を進めていく。

 夢やロマンは重要。でも、それとリアルを無理につなげて語るよりも、リアルはリアルでちゃんと見て考えないといけないんだと思う。そもそも、今のリアルと将来のリアルは全く別ものだ。

 科学技術と社会におけるロマンとリアルは、ロボットだけじゃなく人工知能もまたホットなトピックスだ。

 友人で科学技術社会論研究者のエマちゃんが、汎用人工知能研究会で「ロマンとリアルの狭間から」というプレゼンをした。研究者やビジネスなど人工知能関係者が多くいる中で、「人工知能はまだできていないのに話だけ進んでいる。人工知能は未だ見ぬものでそれを求めるのは夢があること」と言ってのけ、さらに「シンギュラリティとかトランセンデンスとか、現在の価値観そのままで、何故か技術だけが先行してSFのイメージも手伝って技術と社会のがどうなっているかという話がすっぽり抜けてふわふわしている」と言う。

 ひそかに拍手喝采した。

「問題は、研究状況を取り巻く社会が変わってきてしまったこと。夢を語るなら、そこに投資をするなら結果を出せ、評価をしてその結果が採算に見合うものを出せ、という世知辛い世の中になってきている。いやいや、夢があるんですロマンがあるんです、だから投資して下さい、では通用しなくなっているところがある」と指摘。その上で、じゃあリアルに何を考えてどうしていったらいいか、と話が続いていったが、まずはここのところの認識は研究者の中でどうなんだろうか。まだ夢やロマンを語って研究費取ってくる、という考え方なのだろうか。