科技メモ

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触覚は見た目で騙される、NTTの「ぶるなび」

 巨大通信会社のNTTの研究所は、ビジネス寄りの通信技術の開発から、基礎研究まで幅広く手がける。すぐに実用化するわけではない研究も活発に手がけるその様子はまるで大学さながらだ。いや、その「研究者の楽園」ぶりは、もしかしたら大学改革や競争的資金の獲得で汲々としている大学以上かもしれない。

 通信会社として人のコミュニケーションを扱うNTTでは、人の性質をよく調べ、それに基づいたものづくりやサービス開発にも取り組んでいる。

 そのひとつが「ぶるなび」だ。振動子が入った端末で、手で持つと震えによって「引っ張る」感覚を作り出し、目的の方向へナビゲーションする。

 昨日まで開催されていたNTT R&Dフォーラムで体験してきた。

 引っ張られるような感覚を生み出すのは、手のひらの感覚器で感じる触覚だけではない。見た目という視覚情報、これまでの自分の体験にもとづくところが多いと実感した。

 ぶるなびの端末の画面には矢印が表示される。矢印の方向に引っ張られる感覚がするのだ。実は、最初に体験したときは振動を感じるだけで、引っ張られる感じはあまりしなかった。だが、矢印を見ることで、矢印の方向に引っ張られているような気がしてくる。

 体験を始めて時間が経つと、右または左の方向に引っ張られる感覚をより強く感じるようになった。

 実はぶるなびは、旧バージョンを7〜8年前に体験したことがある。その経験と「ぶるなび」という名前の記憶があったから、今回も体験する前から、どんな体験を得られるのか、概ねの予測がついていた。

 だが、初めて経験する人はすぐに引っ張られる感じを得られるのだろうか。解説してくれた方によると、20歳代の人のほうが引っ張る感覚を感じやすいという。なんでだろう。

 Oculusとヘッドフォンを着けてぶるなびを手に持ち、エアロバイクを漕ぐというバーチャルリアリティ(VR)のアプリケーションも体験できたが、このときに、コンテンツが流れる前に「トレーニング」があった。

 トレーニングというのは、ぶるなびの使い方だ。Oculusの画面で矢印が表示され、ぶるなびが震えて矢印の方向に引っ張られる感じがする。このトレーニングがないと、この後流れるコンテンツで、うまく引っ張れる感じを得られない人もいるという。

 VRシステムとしては、Oculusで映像が、ヘッドフォンで音声が、ぶるなびで引っ張られる感じがする。コンテンツは、広大な草原や岩場で、あたかも自分が恐竜を追いかけるようなVR体験ができるというものだ。両手でハンドルを持つようにしてぶるなびを握ると、そこから伝わってくる引っ張られる振動によって、カーブを曲がったり丘陵を駆け下りたりするといった臨場感を得られた。

 というか酔った。Oculus酔い。

 VRの世界に没入して、自然に楽しくエアロバイクやランニングマシンをして運動をするという「VRフィットネス」は、今後VRのアプリケーションとして拡がっていくと言われている。ただ、VRデバイスとしてHMDを使うのは、長時間使いにくいし、VR酔いの問題があるので難しいかと思った。スクリーンなら大丈夫かと。