人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

人工知能(AI)とバーチャルリアリティ(VR)の関係

 AIが流行っている。VRも流行っている。少なくとも、情報系の業界内では。でもこの両者、関係ないそれぞれ独立のテクノロジーと独立の文脈での流行りのように見えるけれど、実は大きく関連しているみたいだ。

 AIはコンピュータが人の知能のような振る舞いをする技術。VRは仮想現実とも訳されるけれど、VR研究者はそうではなく人工現実感が近いと言う。あたかも現実のような世界を感じさせる技術だからだ。

 VRは、1950年代にAIに対して出てきたIA(Intelligence Amplification、知能増幅)という考え方の流れから生まれた。AIではコンピュータが自律的に考えてくれるというのに対して、IAではコンピュータは人が賢く考えるためにその知能を増幅するツール、というわけだ。最近のVR研究では、稲見先生らがAH(Augumented Human、人間拡張)という考え方を提唱しているが、鳴海さんはAI+IA=AHであり、AIとIAが合体して人がもっと賢く振る舞えるようになる、と主張する。

 人とコンピュータとの相互作用において、ものすごく単純化すると、AIが担うのは頭脳の機能で、IAは人とコンピュータのインターフェイスの機能なのでは、と思うのだけれど、違うかしら。

 人間の入力は、五感による知覚システムが担っている。知覚システムへの入力を操作することで、人の感情や行動に影響を与えることができる。知覚システムへの入力する情報(の選択、生成)をAIが担い、入力のインターフェイスをAIが担うことで、人の振る舞いを最適化できるようになるということなのかしら。

 そもそも、人が認識しているこの世界や自分自身はあいまいなものだ。ちょっとしたことで世界はがらっと変わってしまう。そういう人間の性質をうまくつかってあげることで、世界を変えて、人間の能力を増幅することだってできる。それがAHの考え方だ。

 AIにしろVRにしろ情報工学の研究から生まれてきていると思われがちだが、そもそも認知科学や心理学の流れが、生まれた時から流れ込んでいる。

 AI研究者やVR研究者と、よく話す。取材だけじゃなくて、飲み会とか雑談とか、よく話す。彼らと話していると、人間への興味関心の強さを感じる。人それぞれだし、AI研究者とVR研究者でまた違いがあるのだけれど、人間への興味という点では共通している、と思う。