人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、取材とか思ったこととかの備忘録

情報大航海プロジェクトは情報大後悔プロジェクトだった(のかも)

10年前、経産省の「情報大航海プロジェクト」という研究開発プロジェクトを取材していた。3年間で予算150億円、企業が主体となり研究開発と社会実装を進めるということでまあまあ話題になった。

プロジェクト開始2006年はGoogleが巨大化しつつある時期だ。そこで情報大航海プロジェクトは「日の丸検索エンジン」開発プロジェクトとも呼ばれていたが、実際は情報提示の最適化、当時各社がさかんに使っていた単語で言えば「リコメンドエンジン」開発というのが多かった。つまり、今では当たり前の情報提示のパーソナライズだ。検索から買い物、ニュース、広告など今やなんでもかんでも実装されている。

ただ当時取材していた記者1年目の素人の私は、「それあって嬉しいか?」って思っていた。素人のいち利用者として。

もちろん、企業側としては情報提示をパーソナライズすることで利用者にサービスに対してアディクテッドな状態にして、囲い込むのはビジネスモデルとしてリーズナブルだし、当然の戦略だということは理解していた。でも、利用者としては、いやまあああれば便利だろうけれど、いやなくてもいいし、っていうか全然ワクワクしないし魅力的じゃないんだよなあ・・・って思っていた。ディストピア感しかただよってなくてさ。

ビジネスモデルとして猫も杓子もパーソナライズを進めた結果、今となっては立派なフィルターバブルという社会課題が生み出されたし、そこをベースにフェイクニュース拡散の一因にはなるし、post-truth時代なんて呼ばれるようになってしまった。もちろんそれらの原因はパーソナライズだけではないにしても、みんなが一斉にひたそちらに走ったのは、見逃せない重要な原因のひとつだ。

いまひとつ反省するのは、どのみち素人新人KY記者だったんだから、思ったこと率直に書いておけば良かったなーと。

プロジェクト終了付近には「情報大航海プロジェクトは情報大後悔プロジェクトだった」と揶揄する声も少なくなかったが、それは主にこのプロジェクトに投資された税金によって企業が実証実験を行った研究開発の結果、社会実装にどれだけつながっているのか見えなかったからだ。実際、GAFAといった海外巨大IT企業にボロ負けの状況が悪化している現状を鑑みれば、その通りなんだけど。

でも、それ以上に大後悔なのは、どのみち海外から遅れを取っていたんだから、GAFAがみんなやっていたパーソナライズ以外のオルタナティブを模索しておくべきだったんじゃないのかなあと今なら言える。今言ってもしょうがないけど。

ちなみに、このプロジェクトの経産省担当課の課長の八尋さんはソニーから転職して経産省で管理職についた方で、その経歴がまたちょっと話題にはなっていた。ちなみに八尋さんはプロジェクト終了から数年後に経産省を退職し、情報大航海プロジェクトの事務局を務めた日立コンサルティングの役員になられた。いろいろわかりやすい。