人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

第1回肉肉学会カンファレンス雑感

農水省の原田さん、格之進の千葉さん、稲見先生、江渡さんらによる肉肉学会主催の第1回肉肉学会カンファレンスが昨日駒場で開かれました。格之進での講義の後に試食をする肉肉学会にはこれまで伺ったことがありますが、今回のカンファレンスは講演、アンカンファレンス、懇親会(BBQ)と盛りだくさんの中、研究者、生産者、料理人、消費者ら多様な分野の人たちが分け隔てなく議論できていて、そこから何か生まれていきそうで、なんかすごくドキドキしました。

午後は講演とアンカンファレンス、夕方からBBQというスケジュールでした。最初に、個人活動から起業して培養肉(純肉、クリーン・ミート)の開発・普及に取り組むインテグリカルチャー(株)の羽生さんの講演があり、その後、「肉肉学会への期待」と題して、肉肉学会を作ってきた江渡さん、人形町今半の高岡さん、格之進の千葉さん、調理シミュレータを開発する加藤さん、美味しさの研究をする河合さん、食研究と言えばの和田先生、食VRと言えばの鳴海さん、触覚からの食というじゅんじさん、生産者のための食の流通をつくるベンチャー、プラネット・テーブルの菊池さん、磯沼牧場の磯沼さんによるトーク

途中、おやつ休憩で、今半の揚げたてコロッケが届けられました。びっくりするくらい美味しかった。

続くアンカンファレンスは江渡さんによる企画で、その前の講演を聞きながら、参加者はポストイットに気になるテーマや話したいテーマをそれぞれ書いていく。それを元に次のアンカンファレンスが行われました。

アンカンファレンスとは、話すテーマから参加者で自由に決めて進める議論の仕方です。まず先程のポストイットを、なんとなく近いテーマごとに模造紙に貼り付けていきます。それを大雑把に6つのグループに分けて、それぞれのグループの模造紙1枚に先程のポストイットを貼ります。テーマは、チーム1は「純肉」、チーム2は「美味しいのメカニズム(心理・脳)、チーム3は「美味しさの化学・科学」、チーム4は「新調理法」、チーム5は「五感と美味しさ」、チーム6は「消費者と生産」に。

各チームには予め決められたファシリテーターがひとり付きます。ちなみに私はチーム1のファシリ。ファシリ以外は、自由に移動をして、自分が参加をしたいチームを決めます。だいたい1チーム5〜6人に分かれて、セッションがスタート。

1セッションは20分。チーム内で進行役、書記、タイムキーパー、発表役を決めて、議論を始めます。「何を話すか」から、予めあるポストイットを見ながら話し合います。

私が参加したチーム1は羽生さんの講演にあった「純肉」がテーマです。純肉は培養細胞によって作る肉。量産化によって肉の生産エネルギーを大幅に下げて環境負荷を軽減するというもの。背景には、3Dプリンターの普及とメイカームーブメントからパーソナルファブリケーションへと進んだ流れと同様に、細胞培養などのバイオテクノロジーを自宅で気軽にできるようになるというバイオテックのカルチャーもあります。一方で、純肉の社会受容やバイオテクノロジーを気軽に利用することへの倫理的な懸念もあります。そこで、私たちのチームでは、社会受容について話し合いました。ただそもそも、ルール作りや倫理的観点など、社会受容に向けて考慮、整備することが多い中で、環境負荷軽減以外に、消費者にとって純肉のメリットはあるのでしょうか。そこで、稲見先生から「パーソナルファブ肉」という単語が飛び出しました。自分で好みにあった肉を作れるというわけです。

これらの議論をまとめて、発表役が最後に各チームごとに発表をしました。個人的に興味深かったのがチーム6の発表です。チーム6はテーマは「消費者と生産」ですが、マーケティングや情報発信、リスコミのようなソフト面の要素がポストイットには多く含まれていました。

このチームが導き出した結論は「FOOD5.1」。プラネット・テーブルの菊池さんのトークでは、現在の大量生産・大量消費型の食品生産・流通を「FOOD4.0」として、その次の生産者から消費者へ必要な分だけ無駄なコストなく時間のロスなく流通をする流通改革を含め「FOOD5.0」という概念を打ち出していました。それをさらにアップデートしたものがFOOD5.1という、ウェルビーイング的観点が含まれていたものでした。

ポストイットを使ったワークショップはここ数年参加したり企画運営側だったりしてきましたが、江渡さんのアンカンファレンスはとても刺激的です。たぶん今まで2−3回参加させてもらったことがありますが、参加者みんなが関わって、次へ進めていこうと、参加者それぞれが気付きを得えらます。今回も、とても充実したアンカンファレンスでした。

アンカンファレンスのあとは懇親会BBQ。格之進のハンバーグ、ステーキ、今半のすき焼き肉での焼きしゃぶを、千葉さんと高岡さんが焼いてくださるという贅沢なBBQでした。率直に、最高だった。

農政長く担当して外交今見ている某社の記者の方と、今や担当分野だけ取材していると実体がつかめなくなっているっていう話を懇親会でしていて、本当にそう思いました。

また帰り道では、peripheralっていう単語が研究者から何度か出てきたけど、研究者だけじゃなくて記者にとってもperipheralが大事だと思っています。(でも中心を持っていないと周辺もなにもないけれど)

週刊誌に来てからは政治も経済も事件も土地勘のない分野や人のところに突っ込んできたけれど、でもそれって結構しんどい。前提や文脈、目的、見ている方向、それらの共有は難しく、何か共通項を見つけないとコミュニケーションはしんどい(コミュ障の自分にとっては。コミュニケーション強者の同僚はコミュニケーションについて考えたことがないと言っていて目からうろこだった)。

肉肉学会は「肉」という共通項で研究者、生産者、料理人、消費者ら多様な分野の人たちが集まってきて、同じ愛する対象があると、コミュニケーションしんどくないんだなあというのと、そこから何か生まれそう、というのでドキドキしました。

ちなみに炭の火消し(新品)はワインクーラーに使っていました。後片付けのときに知ったw運営スタッフのみなさま、素晴らしい会をありがとうございました!この後の展開が、とても楽しみ。

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