人間関係をあたたかくするVR体験型パフォーマンス「Neighbor」
男女ペアでHMDをかぶって体験する、体験型パフォーマンスの「Neighbor」が、昨日と今日、ICC(東京・初台)で体験ができます。
前日の内覧会で体験、取材させてもらって記事を書きました。少しでも多くの人に体験してもらいたいと思ったから。
体験後、HMDを外したら現実世界にもどり、なぜか爆笑してしまいました。
Neighborを知ったのは去年、藤井先生のFBの投稿。
当時のアーカイブは上のサイトから見られます。「人間関係をあたたかくするVR」というのが素敵だなあと、体験したいと思っていました。それが、今回ICCで体験できるというので、早速行ってきました。
藤井先生はVRで過去と現在の映像をシームレスに切り替えることで、目の前の現実世界とバーチャル空間を切れ目なく行き来する、代替現実(SR)システムを理研時代に開発しました。この仕組みを使ったアートパフォーマンスをパフォーマンスグループのGRINDER-MANらと制作してきて、今作はその3作品目になります。
2012年に発表された最初の「MIRAGE」は私も体験したのですが、現実と過去の区別がつかなくなるあいまいさ、世界がグラグラとする不安な感覚の中、ダンサーの方が自分に触れた時、横を通りかかった時のさっと風圧を感じる時、そうした時に現実の確かさを感じる、不思議な体験でした。
当時はリアルタイム映像の画質がそんなによくなくて、ノイズも入っているからよけいに過去映像との違いがわかりにくかった。同時に、映像の解像度やきれいさは、リアリティを感じるか否かには関係がないのだと感じました。
体験者はひとりでHMDをかぶってその周囲をダンサーがパフォーマンスをするMIRAGEに対して、今回のNeighborは男女ペアの2人で体験する。この2人は、初対面の男女というルール。ダンサーの男女2人とともに舞台にあがり、体験者の2人はHMDを付けて、リアルタイム映像と過去映像が切り替わる中で、相手と手をつなぐように誘導される。
パフォーマンスの時間は約5分。体験後には、初対面の2人がまるで以前からの知り合いのように親密さが増す。
テクノロジーは人と人を分断する方向に向いがちだ。VRだってHMDをかぶって一人の世界に入り込む。でもそうじゃない、人と人をつなぐようなテクノロジーの使い方ができないかといったときに、実はVRはコミュニケーションのためのツールなのだ。
桂さんの著書「人工現実感の世界」の中で、1989年に最初にVRという言葉を使ったジャロン・ラニア―は当時、「バーチャル・リアリティの本当の効用はコミュニケーション・メディアという側面にある」と言っている。ここで言うコミュニケーション・メディアは電話のようなツールという主旨だけれど、情報伝達のために記号化できない、記号化によってこぼれ落ちる何かをすくい上げて提示できるのは、VRなのだと思う。
ということでコミュニケーションのためのVRにとても注目しています。