人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

医療AIって言うのをやめたい

世間でのAI(人工知能)ブームに少し遅れて、医療分野でも医療×AIがブームになった。医療は皆保険制度のために厚労省による規制産業でもあるが、その厚労省が保健医療分野でのAI活用についての方針を示したのが2017年6月。まず推進する分野として「ゲノム医療」「画像診断支援」「診断・治療支援」「創薬」に加えて、今後の推進分野として「介護・認知症」「手術ロボット」の計6領域を重点領域とし、研究開発予算配分などを進めてきた。

この重点6領域が作られるにあたり重視されたひとつが、役所のこうした議論でいつも出てくる「日本の強み」。CT/MRIなどの画像診断が各国と比べ群をぬいて多く、また、ディープラーニングの流行も相まって、特に画像診断支援はデータベース構築から国策として推進されることとなった。

それからもうすぐ2年。医療とAIについてここ3年くらい取材していて思うのは、現状画像診断支援の研究開発はレッドオーシャンになっている一方で、医療現場の人たちが本当に必要としているのは、必ずしもそこだけではないということ。

医療×AIというテクノロジー主導で考えると、重点6領域の設定はリーズナブルだ。一方で、医療現場がそれを本当に必要としているかどうかはまた別の問題。

なので私がここ1年近く周りの人たちに言っているのが、医療AIではなくて、医療の現場の課題解決をテクノロジーを使い、いかに進めるか、ということ。医療AIとか医療×AIって言うの、もうやめようよ。それとも、まだ「AI」っていう言葉はバズワードとして予算取りや注目得るなどもろもろに効き目あるから使ったほうが良いという話なの?

目的と手段が入れ替わってはいけないが、テクノロジー主導型になるとテクノロジー導入そのものが目的化しがちになる。だが、医療のようにシステムが複雑で、多数の多様なステークホルダーからなる領域では、テクノロジーが目的化すると実装は進まない、のだと思う。

 

↓「なんでもかんでも“人工知能”って呼ばない。」ステッカーをじゅんじさんが作って配っていたのはもう3年前のこと。

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