人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

昭和6年(1930年)の曽祖父一家の引っ越し

「家計の縮小をはかるため、先祖伝来の西間門の家を去って、沼津の真砂町に移転、父の五十才頃ですので、経済的には最も困った時代と思います」 曽祖父の三周忌に当たる1974年、その妻と7人の子がつづった「父の思い出」という小冊子の中で曽祖父の長男・喜…

2023年振り返り

2023年最後の日なので今年振り返り。ここ10年くらい気になっている技術ガバナンス、マルチステークホルダー対話プロセスが公私共に根底にあって、会社仕事ではAIを見ているとG7デジタル・技術大臣会合やIGFの取材など通じて両者について色々と考えることがあ…

私から見た、デッカイギができるまで

2023年1月6日〜7日に開催した行政デジタル改革共創会議(デッカイギ)は、協賛企業やスタッフ含め約300人(このうち公務員約200人)が参加し2日間の日程を無事終えました。参加者、登壇者、協賛企業の皆様に厚く御礼申し上げます。また何より9月11日のブレス…

2022年振り返り、Trust, but verifyとか行政組織の情報公開とか認知認識領域とか

2022年いろいろあったけれど、総じてTrust, but verifyがいつも頭にありました。 人に話を聞き取材をする記者の仕事をしているとverifyが仕事の一番大事なところなのは当然なのだけど、人に対するtrustの姿勢はその時々でずいぶん変わります。できたらDon't …

2021年振り返り

基本的に会社仕事の取材・執筆に集中していて、それ以外がほとんどできていないのが去年に続き反省点です。会社仕事は上半期は、システム障害やトラブル系の「読まれる」ネタを意識的に拾い、下半期はデジタル庁や自治体など行政デジタル関連、データ、プラ…

デマ対策と報道

報道機関が、これまでになくデマ対策に力を入れている、ように見える。新型コロナワクチンデマの話だ。 フェイクニュースもデマもいつの時代もある。ネットが普及し、SNSが浸透するに従い、その影響力は力を増し、特に2016年の米大統領選やブリグジットでは…

観察者で当事者

メディアは観察者でも傍観者でも第三者でもない。そうした面があるかもしれないけれど、時には当事者にもなりうる。メディアと言う集団でさえそう。記者と言う個人はなおさらだ。 この10年、ずっとそれを考えてきた。それを相談したら、師匠は、2.5人称と言…

コロナと個別最適、全体最適

東京は、第5波真っただ中だ。今週から緊急事態宣言は関東地方は東京だけでなく一都三県に拡大された。1日の陽性者数は都内では3000-4000人で推移しているが、陽性率の高さからも、検査能力が律速になっているので実際は数値に現れないほどに拡大しているだろ…

新聞記事数推移で見る、AIブーム収束化とDXブーム化

AI

去年と今年は人工知能(AI)ブームが落ち着き、デジタルトランスフォーメーション(DX)ブーム感がありますが、新聞記事数の推移で見て見ました。新聞4紙(日経、朝日、毎日、読売)について、「人工知能」「デジタルトランスフォーメーション」でそれぞれ検…

2020年振り返りと2021年抱負

1年前に、2020年抱負として①いろんなたくさんの人と会って話して議論して企画立てて取材して原稿書くというベースの仕事に割くエフォート増やしたい。各論として興味があるのはデータ、プライバシー、メディア②毎年言っている「定点観測ブイかつ船になる」と…

次々と新しい感染症が発生するのはなぜかー「ウイルスは悪者か お侍先生のウイルス学講義」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に限らず、これまでヒトの間で流行していなかった新しいウイルス感染症の流行は、しばしば発生しています。その多くは、ヒト以外の動物のウイルスが変異してヒトの間での流行を引き起こす人獣共通感染症。ではなぜ次々…

日本での「スペイン風邪」流行の詳細な記録「流行性感冒」(1922年刊)がおもしろかった

19181〜20年のいわゆるスペイン風邪の流行について、内務省衛生局(当時)が1922年にまとめた報告書「流行性感冒」がめちゃおもしろかったです。役所の報告書と思えない科学的で謙虚な態度の記述と詳細なデータ。100年前の文体だけど読みやすいのは、数値を…

COVID-19治療薬候補まとめ:米国はクロロキン、ヒドロキシクロロキン、日本はファビピラビルに注目

先週末、日本感染症学会が開催した第94回日本感染症学会学術講演会をオンラインで聴講していたんですが、治療薬候補の現状が興味深く、少し調べたらJAMAが4月24日に出したレビューPharmacologic Treatments for Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)に米国の…

新型コロナウイルス、抗体検査はなんのため?

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したことがあるかどうかを調べる抗体検査が増えている。 米ニューヨーク州知事のクオモ氏は23日、州政府が実施した抗体検査の予備調査結果を発表した。調査は2日間に渡って州内の食料品店などで3000人を対象に実施、…

SARS-CoV-2ワクチン接種には、臨床試験開始から18〜24ヶ月はかかる

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防に向けたワクチンの臨床試験開始が相次いでいる。英オックスフォード大学は21日、今週中に臨床試験での接種を開始すると発表した。他にも米国、中国でワクチンの臨床試験が始まっている。オックスフォード大学のワ…

AAAIのAIと倫理・社会の会議(AIES)に参加してきた

ニューヨークで2月7〜12日に開催されたAAAI-20に併設して、2月7日~8日に同じ会場で開かれたThird AAAI/ACM Conference on Artificial Intelligence, Ethics, and Society (AIES 2020)に参加しました。いつものような学会取材ではなく、エマちゃんとたくせん…

「表現の自由」炎上を巡る、大島さんの4分類

「あいトリ」「宇崎ちゃん」「東大最年少准教授」のネット炎上をして、2019年三大「表現の自由」炎上と、とりとりさん曰く。「表現の自由」とネット炎上が話題になることがここ数年増えたけれど、その内容や「炎上」の種類もそれぞればらばらで、一言に「表…

「デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する」を読んで、デジタル片付け中

デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する 作者:カル ニューポート 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/10/03 メディア: Kindle版 ネット依存やらスマホ依存やらゲーム依存やら言われる昨今、スマホを手放せなくなってしまった現代人に向けて…

「マスタースイッチ」(ティム・ウー)

コロンビア大学法律学教授で、「ネットワーク中立性」を主張したことで知られるティム・ウーの2011年の著作(日本語訳は2012年発売)。20世紀米国での情報通信産業、メディア産業について企業とキーマンの物語を描く中で、同産業で繰り返されてきた「サイク…

2019年振り返りと2020年抱負

2019年はあいかわらず編集と記者をしていながらもいずれも会社仕事のエフォートがやたら高くなり、もう少し”あそび”としての仕事やらないと・・・と思った1年でした。自分以外の人にお仕事をお願いする(人を雇ってもらうとか外注とか)というのが前年にも増…

「VERTIGO/めまい」と生身の人間

9月、原宿のVACANTで、俳優の森山未來さん、音楽作家のKAITO SAKUMA a.k.a BATIC、写真家の岩本幸一郎さんによる「VERTIGO/めまい」というインスタレーション&パフォーマンス作品を観た。サブタイトルは、情報化社会において「個人を取り戻すこと」にまつ…

「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命ーー人は明日どう生きるのか」メモ

不快感がない、おしゃれ、ハイソできれいな未来が詰まっている。全体的にそんな印象を受けた。内覧会で観たから、会場にいる人たちもおしゃれでハイソな雰囲気をまとっていて、余計にそう感じたのかもしれない。 www.mori.art.museum 展示は、「都市の新たな…

医療AIといえば画像診断支援なのか?

今年3月、オリンパスは「内視鏡分野のAI技術において国内初の薬事承認を得た」とする、AI搭載大腸内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN(エンドブレイン)」を発売した。同社の超拡大内視鏡で撮影中に利用し、リアルタイムで「腫瘍性ポリープ」または…

AIが医療に導入されるのは「不可避な未来」

第三次AIブームが始まって久しいが、私が最初に「医療×AI」を見出しにとった記事を書いたのは2016年だった。その頃から「医療AI」だとか「医療×AI」をうたう記事がメディアでも増えてきた。最近はデジタルトランスフォーメーション(DX)だとか、AI社会だと…

「表現の不自由展・その後」のその後を見にあいちトリエンナーレへ行ってきた

8月1日から始まったあいちトリエンナーレ内の「表現の不自由展・その後」が8月3日に展示中止となった、「その後」を見るために11〜12日にあいちトリエンナーレへ行ってきた。1日目は名古屋市美術館、メイン会場の愛知県芸術センター、2日目は豊田市美術館な…

エボラ感染疑いで村山のBSL-4施設で検査中

追記(17:55) 15:00の厚労省の発表でエボラ陰性との結果 www.mhlw.go.jp エボラ出血熱がアウトブレイク中のコンゴ民主共和国から7月31日に帰国した70歳代の女性が帰国後発熱し、エボラ出血熱の感染疑いがあるとして、国立感染症研究所(村山庁舎)で検査中だ…

「天気の子」と狂った世界を生き抜く私たち

tenkinoko.com 雨が降り続く、狂った異常気象の東京。それをして「世界はもともと狂っている」と須賀さんはうそぶく。 人は科学技術によって自然を征服し、コントロールしようとしてきたのが近代の歴史だ。だが、自然や環境はそんなに簡単に人間にコントロー…

電源と酸素

某シンポジウムの会場に着くなり、Oさんは「電源、電源」と言い、各席に電源があるのを確認すると、PCを出して充電を始めた。某シンポジウム会場は大学内の施設なので、最近では各席に電源があることが多い。Oさんが電源を求めているのはいつものことで、先…

VRと「『現実』は脳の中にしかない」

「『現実』は脳の中にしかない」(「あなたのための物語」長谷敏司) あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 長谷敏司 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2011/06/10 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 342回 この商品を含むブログ (29件) を見る SF…

「AI医療機器」の承認・審査は「プロセス評価」に

本文大量のデータを学習させることで、認識精度が向上する機械学習などのAI技術を活用して開発される、いわゆる「AI医療機器」の 開発が進むが、国の審査・承認といった現行制度はこうした技術進歩に追いついていない。こうした中、AI医療機器の開発を進める…