人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

テクノロジーは、人間と世界の間を媒介するメディア

テクノロジーは自己と環境との間のメディア(媒介)、インターフェイスだと、哲学者の久木田水夫さんは言う。人間は、テクノロジーを介して世界を知覚、認知、解釈し、テクノロジーを介して世界に働きかける。

久木田さんは昨年、「生まれながらのサイボーグ」という本を翻訳した。哲学者でエジンバラ大学教授のアンディ・クラークが2010年に書いた本だ。人はテクノロジーによってずっと、自分自身を拡張してきた。

ここのところ、人工知能やロボットなど情報技術の進歩とそれが人に与える影響の議論があちらこちらで行われている。昨日行ってきたシンポジウムもまた、人と情報技術の関係がテーマだった。

テクノロジーは自己と環境のメディアだから、テクノロジーが変わると、私たちにとっての世界が変わる。情報技術の発展で、自己と環境の間に変化が起こる。と、久木田さんは言う。

一般に、人は環境(世界)についてよく知ることが、よく行動し、よく生きることにつながると思っている。でも、情報技術の発展によって必ずしもそうとは限らなくなった。私たちが世界のことを知らなくても効率的に、良く行動できるようになる。と、久木田さんは言う。

その変化はすでに起こっている。だからこそ、自分の頭で考えることがより必要になっている。

久木田さんには昨年、函館であった人工知能学会の大会で初めてお会いした。「人工知能は道徳的になりうるか、あるいはなるべきか」という久木田さんの講演がとてもおもしろかった、と懇親会で話しかけた。

久木田さんはいつも表情も話し方も変わらない穏やかな方だ。昨年秋にある仕事でお会いした後に、その後の懇親会に急遽いけなくなった理由が安保法案への抗議デモを見学するためと知って、少しびっくりしてちょっと考えてなるほどと思った。ちゃんと自分の目で見て耳で聞いて自分の頭で考えるのが哲学者なんだと、勝手に納得した。