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VRと個人情報

 Twitterで流れてきた、VRと個人情報の取得とその影響に警鐘を鳴らす、スタンフォードの記事を、なんとなく訳してみた。

 元記事はFCC chairman visits Stanford for virtual reality lesson

 

FCC議長がバーチャルリアリティの講義のためにスタンフォードを訪れた

 Federal Communications Commissionの議長であるTom Wheelerは、先週、Jeremy BailensonのVirtual Human Interantion Labを訪れた。テクノロジーがサポートする将来の社会基盤と政策の検討に加えて、バーチャルリアリティの社会応用を学ぶためだ。

 先週、FCCでは歴史に残る出来事があった。高速インターネットサービスは公共的なものとして定義され、そのアクセスは全てのアメリカ人が基本的に利用可能であるべきだということを確立したのだ。次の日、FCC議長はスタンフォードのVirtual Human Interaction Lab (VHIL)を訪問した。ネットにつながったバーチャルリアリティの体験が将来の社会基盤と政策に与える影響を探るためだ。

 「バーチャルリアリティは、ゲートキーパーを持つべきではない」とFCC議長のTom Wheelerは言う。「高速でフェアでオープンなインターネットとともに始まる」。

 VHILの通信分野の教授であるJeremy Bailesnsonは、バーチャルな体験は、慎重に使う場合は、ユーザがVRヘッドセットを外した後に、世界に対してより共感を持って見られるようになることを示す彼の研究を紹介した。ユーザと強い精神的なつながりをつくる、さまざまなバーチャルな環境を通じて、Bailensonと彼の共同研究者はバーチャルリアリティの”ベストプラクティス”に関する洞察と、没入感を得るための技術的な知見を得てきた。

 まるでスーパーマンのような飛行、ブロックホッケーのペナルティ・ショットやあたかも他の人種やジェンダーになったかのようなロールプレイのデモで場を沸かせた後、Wheelerは本題に入った。一般大衆にバーチャルリアリティの体験をしてもらうひとつの重要な懸念として、通信インフラの帯域制限の課題をWheelerは指摘した。いくつかの配信のオプションがある、とBailensonは説明する。ひとつのオプションは、360度見渡せるストリーミング動画であり(美術館のツアー、ビデオゲームインタラクティブな映画、巨大なダンスパーティーなどだ)、インターネット越しにユーザはバーチャルに探索をできる。

 このような活動はしかし、かなりの通信の帯域を必要とする。そのため、Bailensonはユーザが環境の3Dコンテンツを自分のコンピュータにダウンロードし、インターネット経由で送るデータはユーザの体の動きをトラッキングする情報(あなたがどこを見て何に触れどこを歩いているのかといったものだ)のみというシナリオを提示している。トラッキングのデータを少ないパケット量で送信することで、ネットワークの負荷を軽減し、高速でスムーズな反応を実現することで、没入感を向上させることができる。

 「とてもリアルに見せることができるモデルをダウンロードするのに大量のデータ転送が必要だろうが、超効率的にトラッキングデータだけを転送することができる」と、Stanford Woods InstituteのシニアフェローでもあるBailensonは言う。「3Dモデルプラットフォームが勝つと思う」。

 Whellerの他の関心領域は、プライバシーだ。ユーザ間とユーザとビジネスの間の両方を含む。バーチャルリアリティは、プライバシーの幻想をもたらすことができる、とBailensonは言う。だが、洗練されたユーザ(またはコンピュータ)は、バーチャル空間で収集したデータから個人情報の多くを推測できる。

 バーチャルリアリティのシステムは、ミリ単位で個人の動きを追従し、それらの行動(動きと、刺激に対する反応の両方)は、バーチャル・フットプリントをつくる。Bailensonの研究は、このフットプリントは個々のユーザの情報を高い信頼性をもって遡ることができたことを示した。その上、研究者らはこれらのデータセットを使って、ユーザの態度や将来の行動を予測することができる。機械学習アルゴリズムを実装することで、身体のトラッキングデータからより多くの情報を得ることができた。

 「バーチャルリアリティ技術は、信じられないほど没入できるようになってきている。私たちは、バーチャルリアリティ体験における脳の働きが、リアルな体験と同じであることを示している」とBailensonは言う。「私たちは、このメディアがどのように人々影響をあたえるのかを検討する必要があるだろう」