幹細胞研究、再生医療研究で有名な京大名誉教授の中辻憲夫先生が「社会と次世代を担う若者を支援することを目的とする」として作られた財団で、 。
中辻先生は、ES細胞、iPS細胞といった幹細胞の研究から、ベンチャー企業などと連携して再生医療の実用化の橋渡しまで幅広く手がけられた。この分野の第一人者の先生だ。
昨年、取材で京都に伺ったのは、京大の常勤の教授から非常勤の特任教授になり、軸足を研究室外にうつされつつあったころだった。 でも取り上げられていたように、研究者として引退後の次のステップの話を伺った。そのときに先生が仰っていたのが、ベンチャー企業での研究の社会実装支援と若手支援だった。
国内の研究環境は、ここ10-15年ほどで若手研究者には非常に厳しい状況が続いている。文科省の政策で「選択と集中」を進めた結果、定年制雇用の若手研究者が減り、不安定な任期付き雇用の若手研究者が増えたことが大きい。
一方で、かつて定年まで助手で昇進しない「万年助手」がいたように、上の世代では、20歳代でも大学でポジションを獲得すると定年まで安定して雇用が続いてきた研究者が多い。このあたりの世代間格差というか意識の差は甚だしいものがある。そうした中で、少なくとも今の若手よりは(雇用面では)恵まれてきたといわれているシニア研究者、また引退後の研究者の在り方は、見ていないようで結構多くの人は、気にしている。
「私はもう引退するから」とその研究分野およびそこの若手研究者のことを振り返らない人も多いだろう。本気か冗談か、シニア研究者のそういった発言はしばしば耳にする。
中辻先生のような若手支援など、後に続く人たちの道をつくろうとするシニア研究者は、ロールモデルとしてもひとつの希望と思う。