人間とテクノロジー

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トヨタ(製造業偏重でソフト産業軽視の日本の産業構造)をディスりつつエールを送る「ひるね姫」がとても良かった

エンジニア必見のアニメ映画と聞いていた「ひるね姫」。とても良かったです。自動車産業を中心とした日本の産業構造の課題を知った上で観ると、あーあれか、という楽しみ方ができます。

 

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2020年、瀬戸内海に面した岡山県倉敷市のある町。自動車の改造や整備をする父親と二人暮らしの高校3年生のココネの夢と現実を行き来しながら、物語が進む。

ココネがみる夢は、24時間体制で機械をつくる国とその姫で「魔法」を使うエンシェンの物語。エンシェンは「魔法」をかけて、機械やぬいぐるみ、ロボットに命を吹き込む。「魔法」というのはソフトウェアのプログラミングのことだと示唆される。ところが、この王国では「魔法」は忌み嫌われ、エンシェンはガラスの塔に幽閉されている。

この夢と、現実世界がリンクしつつ、物語が進む。

少年と少女の冒険、勧善懲悪、ハッピーエンドのストーリー。ファンタジーの顔をしたSFもしくはロボットアニメとしても楽しめる。だが、なによりも今の日本の産業構造の風刺が効いている。

ココネがみる夢の中の王国は、第三次産業革命以降の内燃機関自動車産業が牽引した経済成長から脱却できない、今の日本の産業構造のようだ。ソフトウェア産業が必要でありながら、従来の産業構造を変えられないために、前へ進めない。

ココネらの現実世界では、その象徴として、トヨタ自動車を示唆する日本を代表する自動車企業が登場する。ハードウェアを重視するあまり、ソフトウェアを軽視し、自動走行の開発に遅れを取る。これは現実の日本企業が陥っているジレンマそのままだ。

そもそも、トヨタ関連だけでも300万人の雇用があると言われる自動車産業だが、内燃機関(エンジン)を主要技術として成り立っているため、モーター駆動の電気自動車(EV)に移行することで、これまで維持してきたシステムと大量の雇用を失いかねない。自動走行の多くはEV。そこで、自動車などの製造業の影響が強い日本の産業構造では、従来型システムからの移行がままならないのが現状だ。

ひるね姫では、ココネがみる夢も、ココネたちの現実も、この課題を強調して描いているのがわかる。ジレンマに陥り、全体的に沈没しつつある日本の産業構造を批判し、皮肉りながらも、エールを送っている。

 

映画の舞台の2020年には、VRが一般に普及している様子がサラッと描かれていました。ココネの友人で大学生のモリオとその友人は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を付けながら、やり取りをしている。タブレットは出てくるが、PCは出てこない。ホロレンズのようにHMDをかぶりながら空中で手を動かすインターフェイスが、PCにかわって普及しつつあるようだ。

 

 なお、ココネの夢の中でロボットとカイジュー(鬼)が戦うということで、パシフィック・リムだって言う人もいたけれど、どうでしょうか。

 

 

あと、ココネの夢に出てくるロボットの足は、これを思い出しました。


Cassie - Next Generation Robot

 

あとあと、ココネこと高畑充希さんがうたう「デイ・ドリーム・ビリーバー」がとてもいいです。


高畑充希が歌う「デイ・ドリーム・ビリーバー」PV映像/映画『ひるね姫』主題歌