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「信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体」(平和博、朝日新書)

 

信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体 (朝日新書)
 

 昨年の米大統領選挙で問題となったフェイクニュース。朝日新聞記者の平さんは、個人ブログ「新聞紙学的」で、米大統領選をめぐるフェイクニュースの現状、それに関連した国内外の動きを追っていた。それらをまとめた大幅に加筆したのが本書だ。

kaztaira.wordpress.com

主にアメリカにおけるフェイクニュースの現状とその背景、それらに対する対応といった今知っておくべきことがまとまっている。日本の報道ではなかなかわかりづらい、アメリカを中心とする海外の動向が詳しい。

フェイクニュースが政治や社会を動かすほどに存在感を増す背景にあるひとつが、インターネットというインフラだ。だが、こうした問題は何も今突然出てきたわけではない。

本書でもたびたび引用されるが、アメリカの政治学者、キャス・サンスティーンは、2001年の著書「インターネットは民主主義の敵か」で、メディア空間の分断と、真偽不明な情報の氾濫の影響をすでに指摘している。

「インターネットの父」ティム・バーナーズ=リーは今年3月に来日して行った講演で、分散型から中央集約型になりつつあるネットの現状において、合わせて個人情報の扱い、フェイクニュースへの懸念を示したが、10年以上前から警鐘を鳴らしてきたという。

今後克服していくためにも、まずは現状把握が必要であり、本書はその大きな助けになる。