人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

AIについて語るということ

AIブームはともかく、人はAIについて語りたいようだ。だいぶ前に、AI研究者某M氏が「AIマインドがない人はAI研究者ではない。AIマインドとは、AIについていかに深く語ったかどうかだ」と仰っていて、はあ、とよくわからなかったんですが、何となく分かるようになってきました。AIを語ることは、きっと、人やその集合である社会について考えることなんですね。

でも、ただ漠然と人や社会について考えるってなかなか難しい。AIというのは、AIの研究者や専門家以外の人にとっても、とっかかりとして入りやすくて、AIをとっかかりに人や社会について考えるということが、最近起こっていることのように思います。

先月、AI暑気払いという謎飲み会がありました。15人くらいで参加者はほぼ官僚と、AIに関係しているその他という感じ。全員同年代で、AI門外漢がほとんど。「AIについて語る会をやりたい!」を言い出した公私共にAIは特に関係ない財務省官僚の一言から、AIについて語りたい人たちが招集されました。

そこで彼が、「羽生さんのNスペを見てからAIおもしろいと興味持った」と目をキラキラさせながら語り続けていたのを見て、AIの魅力っていうか魔力を感じました。AI非専門家(だけど超絶頭いいロジックモンスター)たちがAI愛全開でAI語るのっていいなと。それだけ話のネタとして人を引きつけるのがAIなんだなあと。

一昨日、エマちゃんが企画したAIと社会についての対話イベントがあり、我々はお手伝い要員で行ってきました。イベントは、一般から募集した参加者70人が、9グループに分かれ、3セッションでワークショップをするというもの。それぞれのグループには対話参加者のほかに、AIと社会に関する専門家、グラフィックレコーディングをする学生ファシリ、対話速記メモがいて、対話の様子がその場で可視化されます。

参加者は全くの一般人というよりも、ある程度AIについて普段から考えたり調べたり、または仕事で関わっている人が多かったようです。話題提供として参加してくださった専門家の方たちも、「参加者のレベルが高い」と舌を巻くほど。

3セッションが終わった後の全体の議論の共有では、「AIについて考えることは、結局人間について考えることだ」というまとめがちらほら聞かれました。

AI研究者であるM氏からみても、ワークショップ参加者の様々な属性の方たちからみても、AIについて考え、語ることは、結局のところ人間、その集合である社会について考えることにつながります。

でも、何かについて考えるときに、ひとりで考えるよりも、誰かと一緒に考えたほうが楽しいし、きっと先に進んだ議論ができる。

ワークショップは、そうやって他の人の頭を使って一緒に考えるためのものだと思っています。人との対話の中で人の頭を使って考えて、それを持ち帰ってまた自分の頭を使って考える。そういう両方のプロセスの繰り返しで、考えは深まっていく。でも、そういう前者の場ってなかなかない、だからこういうイベントが必要なんだと。

でも本当は、こういう特別なイベントをやらなくても、普段からいつでも議論ができるといいんだと思う。議論をしてくれる友人や同僚たちに感謝しています。