人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

テンセントが注目する、世界のAIやロボットをめぐる法的、経済的、社会的、倫理的な課題についての議論

人工知能(AI)ブームの中でもここ1−2年は、AI導入の大きなカギとなる法的、経済的、社会的、倫理的な課題についての議論が、世界中で進んでいます。中でも昨年は、それらの議論がまとまって報告書や法案などの具体的な形で相次いで公開されました。そこで昨年1年間のこれらの報告書や法案などをテンセントの研究所がまとめた10項目が並ぶサイトをエマちゃんに教えてもらいました。中国語ですがGoogle翻訳でだいたい意味はわかります。

2017年全球人工智能政策十大热点 

(2017年グローバル人工知能政策10ホットスポット

ここで挙げられた世界の10の議論は以下のとおり。

 

(1)FLI、アシロマAI原則を公開(2017年1月)

AI Principles - Future of Life Institute

 

(2)米コンピュータ協会(USACM)によるアルゴリズム透明性とアカウンタビリティニに関する7原則(2017年1月)

https://cacm.acm.org/magazines/2017/9/220423-toward-algorithmic-transparency-and-accountability/fulltext

(3)欧州議会、世界初のロボット法に関する決議を可決(2017年2月)

Texts adopted - Thursday, 16 February 2017 - Civil Law Rules on Robotics - P8_TA(2017)0051

(4)ドイツ政府、世界初の自動走行車の倫理原則の報告書を公開(2017年6月)

https://www.bmvi.de/SharedDocs/EN/Documents/G/ethic-commission-report.pdf?__blob=publicationFile

(5)中国政府、AI新世代開発計画を発表(2017年7月)

www.gov.cn

(6)韓国議会、ロボット基本法を提案(2017年7月)

https://www.lawmaking.go.kr/lmSts/nsmLmSts/out/2008068/detailRP

(7)米国議会、自動走行に関する法案を議論(2017年9月)

https://www.congress.gov/bill/115th-congress/house-bill/3388

https://www.congress.gov/bill/115th-congress/senate-bill/1885

(8)エストニア政府、ロボット法を提案(2017年10月)

www.independent.co.uk

(9)NY市議会、アルゴリズム差別の課題に対して責任説明法案を採択(2017年12月)

legistar.council.nyc.gov

(10)IEEE、AI設計のための倫理ガイドライン(第2版)を公開(2017年12月)

IEEE-SA - Industry Connections

 

見ての通りですが日本は含まれていません。日本でこれらの議論がまったくなかったかといったらそうではなく、政府、学協会ともに昨年は複数の報告書などが出ています。

http://ai-elsi.org/archives/471

倫理指針本体 http://ai-elsi.org/wp-content/uploads/2017/02/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E5%80%AB%E7%90%86%E6%8C%87%E9%87%9D.pdf

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/ai/summary/index.html

  • 総務省 AIネットワーク社会推進会議、「AIネットワーク社会推進会議報告書 2017 」を公開(2017年6月)

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000067.html

報告書本体 http://www.soumu.go.jp/main_content/000499624.pdf

 

日本は眼中にないってことねってエマちゃんが言っていたんだけれど、そうかもしれないけれど、テンセントが選んだ上の10つと比べて、日本での上記3つは実効性が弱いというかほぼないというのは重要な相違点だと思います。総務省内閣府の報告書にしろ人工知能学会の倫理指針にしろ、法的にも社会的にもなんら拘束力を持つものではありません。これに対して、上の10つはFLIを除いてはいずれも法的もしくは標準化によって実効性を持つ可能性があります。その点で注目に値するのだと思います。