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エボラ感染疑いで村山のBSL-4施設で検査中

追記(17:55)

15:00の厚労省の発表でエボラ陰性との結果

www.mhlw.go.jp

 


エボラ出血熱アウトブレイク中のコンゴ民主共和国から7月31日に帰国した70歳代の女性が帰国後発熱し、エボラ出血熱の感染疑いがあるとして、国立感染症研究所(村山庁舎)で検査中だと、8月4日に厚労省が発表した。

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「患者の検体を国立感染症研究所(村山庁舎)にて検査中です」と厚労省の発表文にサラッと書いてあるが、これは歴史的な出来事。村山がBSL-4施設に指定されるまで、たとえエボラ出血熱疑いがあっても国内施設で検査をすることはできなかった。

エボラ出血熱感染症法で、感染力と感染したときの重篤性の観点から最も危険度の高い「一類感染症」に分類され、その病原体を扱うためには、もっともバイオセーフティーレベルが高い施設であるBSL-4が必要だ。ウイルスが含まれるかどうかわからない段階での検査であってもBSL-4施設で行う必要がある。

感染研の村山庁舎は感染症法改正で2015年8月に国内で初めて稼働するBSL-4施設として指定された。それまで国内で稼働しているBSL-4施設はなく、エボラウイルスのように一類感染症の原因病原体を扱うには、BSL-4施設を持つ海外の施設を利用させてもらうしかなかった。つまり、今回のようにエボラ出血熱感染疑い患者が国内で見つかった場合、検体を海外施設に輸送してそこで検査をすることになった。

同様に、エボラなど一類感染症の治療や予防を研究する研究者は国内ではウイルスを扱うことはできなかったので、海外で研究をするか、ウイルスを模した偽ウイルスを作るなどしていた。高田先生なんですけど。

www.nikkei-science.com

ともかく、BSL-4施設稼働は感染症コントロールに取り組む行政や専門家にとって悲願だったが、施設周辺住民の反対という問題もあって長く稼働してこなかった。

BSL-4対応の施設は村山が1981年に整備されたほか、筑波の理研にも設置されていた。ただ危険な病原体を扱うとして住民の反対があり、BSL-4施設として稼働していなかった。それがアフリカでのエボラ出血熱アウトブレイクが相次いだことから、国内でのBSL-4施設稼働の議論が進み、2015年の法改正に至ったという経緯だ。なお他にBSL-4施設としては熱帯感染症研究が活発な長崎大にも現在建設中だ。

今回まだ検査中で陰性の可能性ももちろんあるが、BSL-4施設の利用例として今後の振り返りも注目してみていきたい。