科技メモ

テクノロジーと人間について、取材の備忘録とか思ったこととか

AIとかIoTとか本気で取り組むなら、社会経済構造と働き方を大きく変える必要がある

「『副業禁止の禁止』を政府にはぜひお願いしたい。副業禁止規定を持っている会社が禁止となると、かなりの優秀な人材が活躍できるようになる。今はものすごく優秀な人材を大企業が絞め殺していて、気付くと他の会社では使えない人材となっている。そもそも副業禁止の会社は管理職が仕事ができないといっているようなものだ」

 今日の未踏会議のパネルディスカッションで、夏野さんが仰っていた。

 IT(情報技術)と言うようになったのは2000年以降らしい。2000年の新語・流行語大賞に「IT革命」が選ばれている。それから16年。日本企業における働き方は相変わらず製造業中心に作られた労働法にしばられていて、ITによる生産性の向上が期待されているサービス産業には合っていない。いや、ITによる構造変化が起きつつある製造業にすら合っていないのかもしれない。

 大量生産大量消費型で経済成長を成し遂げてきた高度経済成長期は、労働集約型の産業構造がメインで、法律も政策もそれに合わせて整備されてきた。いまだにその基本骨格は変わっていない。

 ところが、AIにしろIoTにしろ、インテリジェントなITが社会経済に浸透するというのは、人の単純労働が必要なくなるということだ。一方で、マネージメント、ホスピタリティ(コミュニケーション)、クリエイティビティといった、ITでは代替できない人間の働きがより求められるようになる。従来型の国の産業振興のためのシステムとその未来は合っていない。

 深刻な問題は、現状のシステムではマネージメント、ホスピタリティ、クリエイティビティといった今後より必要となる人材が生まれにくくつぶされやすいということだ。

 そのひとつがIT人材。これまでIT人材不足と言うと、大規模システム開発を担うSEなど兵隊人材を指すことが多かったが、本当に問題なのは、クリエイティブなIT人材の不足だ。

 経済産業省所管の独立行政法人情報処理振興機構(IPA)は2000年からIT人材の発掘と育成をする「未踏事業」を進めている。突出した人材には、スーパークリエイター認定も行っている。昨年には、未踏人材からのビジネス創出を支援するために、一般社団法人「未踏」を設立した。

 これまでも未踏出身で新たな事業やサービスをつくっていくベンチャー起業家は多い。今日の未踏会議では、未踏出身で成功したIT起業家と言える、tacramの田川さん、ユカイ工学の青木さん、PFIの岡野原さんらが登壇した。

 AIやIoTといったインテリジェントなITが社会経済に浸透していく中では、彼らのようなクリエイティブな人材や企業がどんどん生まれていくだろう。一方で、未踏の会議でもこれらベンチャー企業の悩みとして「人材不足」を指摘する声が多かった。とびきり優秀なクリエイティブなIT人材が足りないという。

 優秀な人材は、人口に比例して一定の確率で出てくるものなので、すでに人口減少が始まっている日本では、数的に不足するのは必然だ。解決策のひとつは、外国人の受け入れ。もうひとつが、ひとりが何人かに分かれるという考え方だ。

 冒頭の夏野さんの提言では、定時まで大企業で働いて、夕方6時以降はベンチャー企業で働くといった働き方も可能になる。例えば、ひとりの人間が、1・5人分の働き方をできるようになる。

 もっとも、マネージメント、ホスピタリティ(コミュニケーション)、クリエイティビティを発揮する働き方ができる人は、全ての人ではない。これらの働き方ができない人は、仕事を失うことにもなりかねない。そこで、ベーシックインカムの導入を提案しているのが、経済学者の井上さんだ。