人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

2016-01-01から1年間の記事一覧

2016年に書いた記事振り返り

2016年は記者(週刊朝日編集部)から編集者(医療健康編集部)になり、また記者(AERA編集部)に戻るという慌ただしい1年でした。分野も、週朝では政治から経済からなんでもやっていたのが、医療健康編集部では医療や医学部、医師が対象、AERAでは医療や科…

インターネットディストピア

昨日、エマちゃんに会いに駒場へ行ったら、博物館でマザリナードの展示をしていたのでふらりと入った。 マザリナードは、フランス革命直前の17世紀のフランスで宰相マザランに関連して出回った大量の文書だ。もともと、フロンドの乱と同時期に反マザランの書…

トランプの大統領の誕生と科学者の反応

ドナルド・トランプが米国の次期大統領となることが決まった。一般に、科学技術政策は、国の重要アジェンダとなることはあまりない(票田にならない)が大統領によって、科学研究に影響がでることもある。例えば米国では2001年にジョージ・ブッシュ大統領がE…

今年もDCEXPOへ行ってきた

先週、デジタルコンテンツエキスポ(DCEXPO)へ。DCEXPOは経産省などが主催するデジタル技術の展覧会で、経産省が認定したInnovative Technologiesの展示やデモがあり、それらを誰でも無料で体験できるイベントだ。他にもシンポジウムや展示があるが、主に大…

現状のウェブ文化へのジャロン・ラニアーの痛烈な批判

フリー、オープンネス、知の民主化、クリエイティブ・・・ そのようなキーワードをもってインターネットを礼賛する声は多い。だが、インターネットは本当に私たちを知的に、賢くして、幸せにしたのか。この10年、それは幻想だったことに多くの人たちが気付き…

iPhone7に変えた

AI

2年以上、5sを使い続けてきたiPhoneを7に変えた。意外と重い。スマホにカバーや保護フィルムを付けるのが嫌いなのでずっと裸で使っていたが、落として割そうなのでカバーは着けた。画面のサイズは大きくなったが違和感はない。大きすぎるかと7にしたが…

ネクストVRを探しにVR学会へ行ってきた

14〜16日につくばで開催された日本バーチャルリアリティ学会(VR学会)へ行ってきた。 世間はVRブームで、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の発売が相次いでいることもあり、今年はVR普及元年とも言われている。今言われているVRは、HMDを付けて体験するも…

VRメディアが(いつの間にか)たくさんできていた

メディアから社会の流行り廃れを感じ取れる。VRについて言えば、ウェブメディアのMoguraVRとPANORAは前から見ていたが、いつの間にか雨後の筍のようにVRメディアが増えていたようだ。リクルート主催のTECH LAB PAAK主催のイベント「VRメデイアサミット」では…

VRアミューズメント施設のVRゾーンへ行ってきた

お台場はダイバーシティにある、バンダイナムコが期間限定で設置している「VRゾーン」へ行ってきた。VRを体験できる場所はイベントなどであまたあれど、「お金を取って」アミューズメント施設として提供しているところはまだ少ないだろう。 VRゾーンへ行くに…

ファッション×テクノロジーが気になっている

ファッションをずっと取材しているOさんは、ファッションの取材を通じて社会の動きを見たいと言う。去年くらいから、「ファッションテック」というキーワードを聞くようになった。ファッションとテクノロジーを組み合わせた造語で、レガシーなファッションの…

「ビッグデータと人工知能 可能性と罠を見極める」(西垣通、中公新書)

メディア報道では少し前は「ビッグデータ」、最近は「人工知能(AI)」という単語がさかんに使われ、バズワードとなっている。バズワードとなったテクノロジーは、多くの場合その明るいメリットが強調されるかもしくは将来人類に不利益を与えるとする「脅威…

モーニングの新連載「アイアンバディ」に見るロボット研究

今日発売の「モーニング」の新連載「アイアンバディ」(佐藤真通)は、ヒューマノイドロボットを作るエンジニアのマンガだ。現実のロボット研究のネタがモチーフになっている場面もあり、取材でよく知っているロボット研究者たちの顔が浮かんで、胸熱になっ…

ポケモンGOと、東京という特殊空間

「うちの職場やまわりでは、全然ポケモンGOって聞かないよ。でもFacebookを見たらみんな書き込んでいるでしょう」 昨夜、地元で医師をしている中高の同級生がそう言った。学会などの出張で東京にはしばしば来ているが、「東京に行くときは、外国に行くような…

ポケモンGOを3日間やってみた

Tech crunchのリーク報道で水曜に日本リリースといわれたポケモンGO。公式が何も言っていないのに勝手に「延期」されたことになっていたが、金曜にようやくリリースされた。Twitterが騒がしくてリリースを知り(当初はAndroidのみ)、その後iPhoneでもリリー…

嗜癖の研究

じょんひょんさんに誘われて行ってきた、鈴木さんの個展「ムダなルール」がおもしろかった。 何年ぶりかに通ったキャットストリートからくねくね道に入って、若いねー、おしゃれだねー、と年寄りじみた会話をしながら展示会場まで道に迷った所で、鈴木さんに…

フィルターバブルの中を生きている

中立公平だとか、メタにものごとを見ているとか言ったって、私たちは常にフィルターバブルの中を生きている。「フィルターバブル」は、ネット検索などでアルゴリズムが最適化された結果、自分に近い、潜在的に望む情報にしかリーチできなくなり、あたかもフ…

Science誌の新媒体Science Roboticsはオルタナティブな研究の発表の場に

中高生のころ、alternativeという単語を何度も辞書を引いた。意味がよくわからなかった。ニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズをよく聴いていたころのことだ。 今macに入っている辞書でalternativeを調べると、以下のように出てくる。 1 【今あるものと…

科学技術研究のデュアルユース

科学技術を取材する立場からここ数年の大きなアジェンダのひとつが、科学技術研究の民生利用と軍事利用のデュアルユース(両義性)だ。いくつかあるが、大きく注目をあつめるきっかけとなったのが、昨年度から防衛省が始めた、大学などのアカデミアの研究を…

「電脳コイル」の世界を実現するHoloLensはミライを感じるけれど初心者にはまだ難しかった

ネットで記事を見かけるたびに、やりたいやりたいとつぶやいていた、マイクロソフトのHoloLens。先日、ひょんなところで偶然体験できたのでメモ。ミクミンPさんに感謝です。 HoloLensはARゴーグルだ。ドラゴンボールのスカウターのようなものだ。ヘッドマウ…

自動運転車の社会的ジレンマ

週末に、NatureやScienceの編集記事、IEEE Spectrumなど海外の研究開発のニュースサイトを見る。ざっくりみていて、自動運転車の話題が多かったなあと。今週のScienceで紹介されている研究紹介記事のざっくり翻訳と動画です。 元記事はWhen is it OK for our…

シニア研究者のその後のお仕事

幹細胞研究、再生医療研究で有名な京大名誉教授の中辻憲夫先生が「社会と次世代を担う若者を支援することを目的とする」として作られた財団で、学術研究や社会貢献を目的とした会議開催費の助成公募を行っている。 中辻先生は、ES細胞、iPS細胞といった幹細…

科学には解けない問題

去年、中国の研究者らが、ヒト受精卵にゲノム編集を施したことが話題になった。その時にNatureにジャーナリストが書いた記事を去年訳したのが出てきたので、以下に貼り付けた。なお、元記事のタイトルにある「CRISPR」は「CRISPR/Cas9」システムに代表される…

VRと個人情報

Twitterで流れてきた、VRと個人情報の取得とその影響に警鐘を鳴らす、スタンフォードの記事を、なんとなく訳してみた。 元記事はFCC chairman visits Stanford for virtual reality lesson FCC議長がバーチャルリアリティの講義のためにスタンフォードを訪れ…

ゲノム編集でがん治療の治験へ、NIHが初承認

狙った遺伝子を簡単に改変できる技術が「ゲノム編集」だ。ここ数年で急速に広まっている。そのゲノム編集を、人の病気の治療に使う初めての臨床試験が、米国で始まる。がんの治療として、本来人が持っている免疫を活用するがんの免疫療法として、米NIHが臨床…

VRとクロスモーダルとサイバネティックスシミュレーション

日本バーチャルリアリティ(VR)学会という学会がある。記者になった1年目に科学技術部の所属で、当初担当だったバイオからITに担当が変わってすぐのときに、ひょんなところから、VR学会の中心人物である廣瀬先生の取材に伺って以来、どういうわけかここ10…

錯覚を活用して人の感情を操作する

今朝、NHKをつけたら錯覚を活用する特集をやっていた。「サキどり」という番組。鳴海さんたちの「扇情的な鏡」やあぱぱさんの「電気味覚フォーク」も出ていて、番組の最後で、あぱぱさんは「錯覚を利用して幸せになるのもよいのではないでしょうか」と言う。…

鍵盤を叩く自分の指が伸び縮みするような錯覚が起きる「えくす手」

東大・廣瀬研M2のなみちゃんの作品「えくす手」は、表示する映像で見た目を変えることで、鍵盤を弾いている手があたかも伸びたり縮んだりするかのような体験ができる。 半年前に東大の制作展で体験したときは、映像の視覚効果だけだったが、あたかも本当に自…

専門家とメディアの信頼に基づいて、一緒につくっていきたい

新卒で入社した新聞社の社是は、「中立公平」だった。記者は、ファクトを探してきて、自分をできるだけ省いてそのファクトだけを書くのが仕事だ。そう思っていた。 「Aさんはインドネシアを侵略すべし、と言った。一方Bさんはマレーシアを侵略すべし、と言っ…

ドローンって今どうなの?

ドローンって今どうなの?と知り合いのビジネス誌編集者に聞かれて話したこと。 ドローンがブレイク?したのは、昨春の官邸ドローン事件だ。その後メディアではドローンの報道が相次ぎ、トントン拍子で航空法改正にいたった。 が、その一方で、ビジネスとし…

研究者が“倫理”を議論したくなる場だった

「倫理セッションよりも倫理的になってきましたね・・・」 と司会者が言った。先日の人工知能学会全国大会の3日目の、人工生命化する社会のオーガナイズドセッション(OS)でのことだ。 このOSはオーガナイザーの一人の池上先生が仰る、複雑化する社会を人…