人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

2022年振り返り、Trust, but verifyとか行政組織の情報公開とか認知認識領域とか

2022年いろいろあったけれど、総じてTrust, but verifyがいつも頭にありました。

人に話を聞き取材をする記者の仕事をしているとverifyが仕事の一番大事なところなのは当然なのだけど、人に対するtrustの姿勢はその時々でずいぶん変わります。できたらDon't trust, verifyではなくTrust, but verifyがいい、ではどうしたらそうできるかとかでだいぶ頭を悩ませていました。

Trustは何もしなくても存在するものではなく、人間同士の相互作用の中でゼロ(もしくはマイナス)から構築していくもので、自分一人でもできないし、取材先など相手の人間、環境、状況、文脈次第でもあるものなので。

去年12月のKGRIのウェビナーで、クロサカさんがメディア(ジャーナリズム)と民主主義についてのコメントとして挙げたのが「Don't Trust. Verify.(信じるな、検証せよ)」「Trust. But Verify.(信じろ、でも検証せよ)」。この2つのコンセプトが自分の職種とつなげて挙げられたのがちょっと気になってしばらく頭に置いていました。某ブロックチェーン企業の標語として「Don't Trust. Verify.」が挙げられているのは有名で、一方の「Trust. But Verify.」はロシアのことわざからで米ソ核軍縮プロセスで有名になったと松尾先生に教えていただきましたが(松尾先生がブログでも書かれていました)、記者の仕事とひもづいたのはクロサカさんのコメントからでした。

これは松尾先生に教えていただいた米ソ核軍縮でのTrust. But Verify.動画

www.youtube.com

2023年も引き続きもやもやこのへん頭にあるんだろうなー。Trust大事ですよね(オチなし)。

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各論では取材対象考える上でわりと頭にあることが多かったのが、行政組織の情報公開(透明性)と、認知認識領域の2点です。

特にデジタルは政策立案わりと初期から調達、執行まで政策渉外、ロビー、PA、公共営業など官民連携が重要なので、それらを円滑に進める(アクセル)ためにもガバナンス(アクセルもあるけど特に公平性の観点からのブレーキや監視)のためにも、行政組織の情報公開(透明性)が気になっていました。関連して書いたのは以下とか。

xtech.nikkei.com

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認知認識領域は、もともとビジネス(ネット、広告)ではこの10年以上中心となっていましたが、2022年は2月のロシアのウクライナ侵攻から12月の防衛三文書まで特に安全保障領域で公的にクローズアップされたのが大きいと思っています。まだ記事はあまり書いていないですが(サイバー防衛シンポジウム熱海のレポートくらい?)、2023年は特に注目して見ていければなと頭においています。

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あと2022年は会社の業務外のもろもろが前職ぶりにいろいろ増えました。その中でもエフォート大きいのが9月からここ数か月夜と週末に作業・MTGしているデッカイギです。

今年もデジタル庁や自治体など、行政デジタル関連を中心に取材・執筆してきましたが、取材するうちに課題が気になるとそれをどう解決できるのかなと(記事を書く以外で)もやもやします。前職まではそういうときにエマちゃんと話してこれやろうあれやろうといろいろやっていましたが、現職に来てからあまり行動できていなかったのが今年はたぶん現職来て初めてじゃないかな、業務外で具体的に進みました。ほんとみなさまには敬意と感謝しかありません。

行政デジタルにしても現実の課題をどう解決していくかというのは、ITの技術だけではなく、法制度、政治とのバランスの中で前へ進みます。デジタルだけでは課題解決になりません。それらはそれらのアクターである様々なステークホルダーが足並みをそろえて課題解決に向かわないと進みません。

一方で、霞が関自治体、事業者などいろいろな方たちに取材させていただく中で、現実の課題解決のために行政デジタルを進めるそのプロセスにおいて、インセンティブがなかったり利害が衝突したりコミュニケーション上の課題があったりと、ステークホルダー同士の関係性の課題が前へ進める壁になっていると感じることが多々ありました。

ちらっとそんなことを書いたのがこの記者の眼。

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デジタル庁が司令塔となって行政DXを進めるには、各府省庁職員や自治体職員、行政と仕事をする企業の社員など、現場の人たちによる地に足の着いた議論に耳を傾け、議論し、協働していく必要がある。そのために、自治体システム標準化や政府情報システムの刷新など、それぞれの目的に応じて関連するステークホルダーが一堂に集まり、情報共有や議論をする合宿形式の勉強会を開催してはどうだろうか。

と最後に書いたんですが、この記事書いた時点では何も決まってなかったんですが、いろいろあって9月以降に話が具体化して、有志のなかまと年明けにデッカイギをやります(会社の仕事ではなく、業務外)。ほんとみなさますごいなあとこの数か月いつも思って準備をしています。みんな大変尊敬する方たちです。

デッカイギ準備やりながらふと思い出して昔人工知能学会誌に書いた雑文読んでいたら、自分ずっと同じこと考えていることは確認できました。つくりたいのは、昔からエマちゃんとは「安心して炎上できる場」と呼んでいたけれど、心理的安全性確保したうえで、情報共有や議論や信頼醸成ができる場。そういう場で、アクターであるステークホルダーが共有できる目的をもって、課題に向き合っていけば一緒に解決していけるんじゃないかという仮説(と小さいながらもいくつかの成功体験)がずっとあります。

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今年も取材先みなさまはじめ、関係のみなさまには大変お世話になりまして、ありがとうございました。2023年も相変わらず行政デジタル関連見てまいりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。