人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、取材とか思ったこととかの備忘録

コミュニケーションの未来はVR

2016年は「VR普及元年」といわれるけれど、2017年は「コミュニケーションVR元年」だと勝手に思っている。昨年来製品販売が相次ぐ、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とコントローラーといったシステムをVRと呼ぶのなら、それらをネットワークに接続して人同士でコミュニケーションをとる「コミュニケーションVR」がVRの本命だと思っている。

オンラインのVR空間でコミュニケーションをするプラットフォームとしては、今年4月にFacebookFacebook spaceを発表したほか、日本ではclusterが6月から始まった。

Facebook spaceは同社が買収したOculusのHMDを使う事が前提になっているが、clusterはHMDのほか通常のPCのディスプレイでも利用できる。

また、コロプラ子会社の360チャンネルが今夏発表した「FACE」は、視線追従機能付きHMDの「FOVE」とカメラを組み合わせて、表情の情報を取得し、それをVR空間内のアバターにリアルタイムで反映させる。表情付きのコミュニケーションVRが可能になるというわけだ。

こうしたコミュニケーションVRのためのプラットフォームは増えていくだろう。

コミュニケーションのツールは、手紙、電報、電話、ポケベル、PHS、携帯電話、スマホとハード的に変化してくるとともに、ソフト的にもEメール、チャット、ビデオメッセージ、Skypeのようなテレビ会議とスピードが早く、情報量がリッチな方向へと進展してきた。コミュニケーションVRは当然、その延長線上にあるだとう。

っていう話を特集のメイン記事で書きたかったんだけれど、メイン記事では通りませんでした。ほかで書いたからいいんだけれど、でも、こういう避けられない未来、っていうのを今明確に書いておきたかった。

もう少しコミュニケーションVRについて。

HMDなど技術としてのVRは、ディスプレイの拡張だ。二次元で一定のスペース内だけだったディスプレイを3次元で360度にした。音声や触覚というのもあるが、視覚のディスプレイの効果が人の認知能力上最も大きい。

こうしたディスプレイの拡張によってコミュニケートできる情報量が圧倒的に増え、それによってリッチなコミュニケーションが可能になる、というのが最も単純な理解。現実のコミュニケーションの要点(そもそもバーチャルとは本質という意味だ)を抽出し、それを再現して提示する。それに加えて、追加の付加情報を提示する。コミュニケーションVRはそういったものだ。

でも、要点だけを抽出して提示するだけじゃなくて、付加情報や情報操作のあり方によっては、現実を「超える」コミュニケーションが可能になる。「超える」というのは、さまざまな点での定義ができるけれど、コミュニケーションにおいてはその機能から見ていくのが適切なのだと思う。

1989年に「バーチャルリアリティ(VR)」という言葉を最初に使ったコンピュータサイエンティストで起業家、音楽家でもあるジャロン・ラニアーは、当時すでに「バーチャル・リアリティの本当の効用はコミュニケーション・メディアという側面にある」と言っている。ここで言うコミュニケーション・メディアは電話のようなツールという主旨だけれど、情報伝達のために記号化できない、記号化によってこぼれ落ちる何かをすくい上げて提示できるのは、VRなのだと思う。