半歩先
一歩先や二歩先ではだめなんだよね。半歩先じゃないと。
ジャーナリストである友人が言ったそのひとことについて考えている。
彼女が言うのは、多くの人の共感を得て、人を、社会を動かしていく。そのためには、今目先のことではもう遅い、一歩先や二歩先では早すぎる、現状から半歩先くらいのアジェンダを書く、という話だ。
現状から半歩先を書くというのは、今はまだ言語化されてはいなくても多くの人がもやもやと感じていること、それを言語化して可視化していくということだ。1−2年後くらいにはそのことについて多くの人が関心を持って議論している、それを今書く。そうしてアジェンダ形成に関わっていく。
半歩先、というのが重要だ。一歩先でも二歩先でも共感を得ない。5年の、10年後に確実にそれが問題になると言っても、多くの人の共感を得ない。
科学技術の話を書く時の難しさはそこで、1〜2年後の社会に影響を与える科学技術というのは、すでに開発段階で社会実装されているものだ。それはすでにプロダクトでありサービスであり、研究の段階ではない。科学技術の話を書くのは未来の話。そこに当事者意識を持って共感を得るのは難しいが、その中で半歩先になりうる切り口を探す。
半歩先を書く。そうしてアジェンダ形成につなげる。メディアとしてはそれは重要なこと。ただし、科学技術の研究そのものは、必ずしもそこを見てはいけないのだと思う。