人間とテクノロジー

人間とテクノロジーについて、人と話したり、議論したり、思ったりしたことの備忘録

次々と新しい感染症が発生するのはなぜかー「ウイルスは悪者か お侍先生のウイルス学講義」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に限らず、これまでヒトの間で流行していなかった新しいウイルス感染症の流行は、しばしば発生しています。その多くは、ヒト以外の動物のウイルスが変異してヒトの間での流行を引き起こす人獣共通感染症。ではなぜ次々…

日本での「スペイン風邪」流行の詳細な記録「流行性感冒」(1922年刊)がおもしろかった

19181〜20年のいわゆるスペイン風邪の流行について、内務省衛生局(当時)が1922年にまとめた報告書「流行性感冒」がめちゃおもしろかったです。役所の報告書と思えない科学的で謙虚な態度の記述と詳細なデータ。100年前の文体だけど読みやすいのは、数値を…

「デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する」を読んで、デジタル片付け中

デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する 作者:カル ニューポート 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/10/03 メディア: Kindle版 ネット依存やらスマホ依存やらゲーム依存やら言われる昨今、スマホを手放せなくなってしまった現代人に向けて…

「マスタースイッチ」(ティム・ウー)

コロンビア大学法律学教授で、「ネットワーク中立性」を主張したことで知られるティム・ウーの2011年の著作(日本語訳は2012年発売)。20世紀米国での情報通信産業、メディア産業について企業とキーマンの物語を描く中で、同産業で繰り返されてきた「サイク…

「分人」を元にコミュニケーションを考える

数年前、分人コミュニケーションをテレコミュニケーションやVRで作る研究の話を聞いた。テレコミュニケーションのインターフェイスを最適化することで、分人を切り替えやすくするというそのアイデアは、なんとなくしっくりこなかった。 それ以来分人について…

「VRは脳をどう変えるか?仮想現実の心理学」(ジェレミー・ベレイソン)

心理学者でバーチャルリアリティ(VR)を使った研究に20年取り組んでいるスタンフォード大学教授のジェレミー・ベレイソン氏による著書。自身の研究に基づいて、VRの人への影響を調べる研究から、その影響を利用した医療や環境保護、教育などの社会実装の取…

「わたしを離さないで」はディストピアSFだ

カズオ・イシグロさんが、ノーベル文学賞を受賞した。これまでに「日の名残り」も読んだが、7年前に初めて読んだ「わたしを離さないで」は強烈だった。 わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) 作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄 出版社/メーカー: 早川書房 発…

「仮想通貨とブロックチェーン」(木ノ内敏久、日本経済新聞出版社)

著者は日経新聞産業部や経済解説部での記者、日本経済研究センター研究員などを経て、経営論などが専門の日経新聞シニア・エディター。貨幣の概念から、仮想通貨の解説、ビットコインの現状、それを支えるブロックチェーンの仕組みまで、わかりやすくまとま…

「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?」(山本一成、ダイヤモンド社)

今年4月、5月に開催されたコンピュータ将棋とプロ棋士による対局「電王戦」で、佐藤天彦名人を破ったのがコンピュータ将棋「ポナンザ」だ。そのポナンザを10年にわたり開発してきた山本一成さんが、将棋とAI、囲碁とAI、人間とAI、また倫理観まで語ったの…

「挑む! 科学を拓く28人」(日経サイエンス編集部 編、日本経済新聞社)

日経サイエンスの巻頭インタビュー連載「フロントランナー 挑む」に2014年〜2017年前半の間に掲載された中から28本をまとめて編集した本が明日発売されます。 www.nikkei-science.com 「挑む」はその分野のトップ研究者にインタビューをしてまとめる「人もの…

「信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体」(平和博、朝日新書)

信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体 (朝日新書) 作者: 平和博 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2017/06/13 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 昨年の米大統領選挙で問題となったフェイクニュース。朝日新聞記者の平さん…

"Homo Deus : A Brif History of Tomorrow" 翻訳その2

その1に続いて、Homo Deusの雑翻訳中。感染症好きなのでこの段落読むの楽しかった。 Homo Deus: A Brief History of Tomorrow 作者: Yuval Noah Harari 出版社/メーカー: Vintage 発売日: 2017/03/23 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る I…

"Homo Deus : A Brif History of Tomorrow" 翻訳その1

「サピエンス全史」に続くYuval Noah Harariによる著作「Homo Deus」を読もうとしたら邦訳がなかったので、原書をKindleで購入したのですが、英語が簡単で読みやすいので、せっかくなので訳してみようと思います。 Homo Deus: A Brief History of Tomorrow …

「マイクロバイオームの世界 あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち」(ロブ・デサール&スーザン・L.パーキンズ著、斉藤隆央訳、紀伊国屋書店)

2000年代前半の学生時代。同じ大学で農学部の院生だった友人がメタゲノムの研究をしていました。当時、次世代シーケンサーが出てきたくらい。トリ1羽ずつからサンプル採取してはちまちまとPCRでウイルス遺伝子の断片を探していた当時の私は、細菌の集団をそ…

「「軍事研究」の戦後史:科学者はどう向き合ってきたか」(杉山滋郎、ミネルヴァ書房)

科学史が専門で、北大教授の杉山先生による「「軍事研究」の戦後史:科学者はどう向き合ってきたか」は、戦中から今に至る、軍事(安全保障/防衛)研究とアカデミアをめぐる出来事がまとまっていて、大変便利な本でした。 国の安全保障政策の動向はもとより…

「日本のルィセンコ論争」(中村禎里、みすず書房)

※昨年、特定の人に読んでもらうために書いたもの。 日本のルィセンコ論争 (みすずライブラリー) posted with amazlet at 17.01.01 中村 禎里 みすず書房 売り上げランキング: 952,751 Amazon.co.jpで詳細を見る ルイセンコ事件をご存知だろうか。1930年代の…

「ビッグデータと人工知能 可能性と罠を見極める」(西垣通、中公新書)

メディア報道では少し前は「ビッグデータ」、最近は「人工知能(AI)」という単語がさかんに使われ、バズワードとなっている。バズワードとなったテクノロジーは、多くの場合その明るいメリットが強調されるかもしくは将来人類に不利益を与えるとする「脅威…

モーニングの新連載「アイアンバディ」に見るロボット研究

今日発売の「モーニング」の新連載「アイアンバディ」(佐藤真通)は、ヒューマノイドロボットを作るエンジニアのマンガだ。現実のロボット研究のネタがモチーフになっている場面もあり、取材でよく知っているロボット研究者たちの顔が浮かんで、胸熱になっ…

変態で変人の研究者たちが愛おしすぎるマンガ「決してマネしないでください。」がめちゃくちゃおもしろかった

Unityの簗瀬さんが「決してマネしないでください。」(蛇蔵、講談社)をFBで薦めていてKindleでポチったら1ページ目からツボにはまり、全3巻一気読みして、明日朝早いのに、感想文を書かずにはいられない深夜3時。とにかく読んでいると、研究者が大好きだ…