当事者不在の議論

日本学術会議ではこれまでに2回にわたって「軍事研究」を禁止する声明を出してきた。一方、一昨年度から防衛省(防衛装備庁)による安全保障技術研究推進制度としたファンディングが始まり、大学などのアカデミア研究者が防衛予算によって研究をする仕組みが整った。

 
そこで学術会議では昨年春から検討会を開いて、安全保障研究と学術について検討を重ねてきた。先日の検討会では、これまでの「軍事研究」禁止の方針を踏襲するという声明案がまとまった。
 
私はこの学術会議の検討会のうち数回を傍聴してきて、違和感を感じるのは、当事者不在で議論が行われているということ。
 
検討会の構成員は、法学部教授の杉田委員長を始めとして、社会学、文学、理学などが多い。工学系研究者もいるが、実際に検討会の場で発言が多い人は偏っている。また、杉田委員長の意見が全体に大きく影響しているようにも見える。
 
そもそも競争的資金(防衛装備庁のファンディングも競争的資金のひとつだ)含む科学技術予算の分野別の配分を見てみると、基礎・人材育成以外のほとんどがライフサイエンスと工学分野だ。

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内閣府資料より引用。
安全保障技術研究推進制度の今年度採択課題を見ても、多くが工学系だ。理学系はともかく(そもそも理論なら工学系ほど大きな予算はかからない)、人文社会科学系は、安全保障技術研究推進制度については当事者ですらない。
 
にもかかわらず、学術会議の検討会は人文社会科学系の研究者が主導して進められていることに、疑問を感じた。いったい、誰のために、何のために検討をして、声明を出そうとしているのかしら?と純粋に疑問。

先日の検討会傍聴。混んでた。